コラム
公開日:2023.11.14
こんにちは!施設園芸.com編集部です。新企画「栽培に役立つQ&A 第2弾」のまとめ記事をお届けいたします。
「栽培に役立つQ&A」は、農家さんから寄せられた栽培に関するご相談を、私たち編集部が栽培に詳しい方々に質問し、回答いただくコーナーです。今回のテーマは「土づくり」。
質問に答えてくれる専門家は土壌微生物のスペシャリスト 前田時久さんです!
日本有機(株)
研究開発室長 前田時久氏
土壌微生物関連の財団法人や研究所の主任研究員として、土壌微生物の研究(特に堆肥化微生物フロラの研究)に携る。
細菌や放線菌類を得意とする土壌微生物のスペシャリスト。
現在は、鹿児島県の有機資材メーカー日本有機(株)の研究開発室長として、農業用の乳酸菌微生物資材の製造・開発を行っている。
【質問1】トマト栽培で太陽熱消毒を行っています。還元消毒に挑戦したいと思っていますが、しっかり効かせる方法を教えてください。
病害生物が生育できない条件を作り出すことが重要です。「1.熱を上げる」「2.無酸素状態を作る」「3.拮抗する微生物を増殖させる」これら3つの条件を約1ヶ月間維持できる方法を考えましょう。無酸素状態が不完全だと、病害微生物の養分となり逆効果になることもあります。また、更に好気的な病害微生物の増殖の場を失わせるために、嫌気性菌の増殖を促しましょう。
【質問2】トマト栽培をしており、堆肥にもみ殻を使用しています。効率よく堆肥化する方法を教えてください!
もみ殻の堆肥化では「リグニン」の障害を除くことに十分時間をかけた堆肥化が必要になります。そのため、強制的に分解を早めるか、物理性向上などの他の効果も兼ねた利用法のどちらかを選んだ方が良いのではないかと考えます。
※リグニンとは木質(素)と呼ばれる高分子の物質です
●強制的に分解を早める方法
時間短縮として、消石灰のようなアルカリ資材でリグニンの溶出を早めてたい肥化をして、種子を使って発芽試験をし、障害の出ないことを確認しながらたい肥化の終期を見極めます。
●他の効果も兼ねた利用法
1)生のもみ殻を表面施用して障害を回避し、栽培終了後に堆肥化する。(※1年目は生のもみ殻として利用し、2年目のものを堆肥化)
2)もみ殻入りのボカシ肥料として、土の物理性改善も兼ねた利用をする。
3)土壌深耕し、施用量は同じまま施用濃度を下げ、土の物理性を改善し障害を軽減する。
【質問3】微生物資材が流行っていますが、知識がないため教えてください。 糖蜜・酵母・乳酸菌などいろいろな種類があるかと思いますが、どんな菌にどんな効果があるのか、何菌が推奨なのか教えてほしいです。
微生物資材として販売されている製品には、乳酸菌、酵母(主にサッカロミセス)、枯草菌、光合成細菌などが含まれているものが多いようですが、中でも【乳酸菌】と【酵母】が含まれている資材が推奨です。
乳酸菌は、増殖の過程で乳酸を生産し、一時的にpHを低下させ病害菌等の増殖を抑制します。酵母は、呼吸作用で二酸化炭素を出し、嫌気的な環境を作り出し、嫌気性菌である乳酸菌の増殖環境を整えます。また、余分な養分を菌体内に取り込んで、肥料分の過剰害と肥料枯れを防ぎ、肥料効果を高めます。
【質問4】土壌内の石灰(カルシウム)、カリが少ないので困っています。土壌内に効率よく溜める方法はありますか?潅水を行っても流れ出ないのかも含め、教えてください。
カリは元々水に溶けやすい成分ですので、土壌自体の保持力(CEC)を高めることが肝要です。 土壌自体の保持力を高める方法としては、保水性やイオン交換能の高い鉱物質の資材(ゼオライト他)の投入や、変異荷電を有しCECを高める効果のある堆肥・腐葉土などの施用があります。
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