コラム
公開日:2022.03.30
このところ、国産のアボカド栽培が盛り上がっているのはご存知でしょうか?クリーミーでコクがあって、森のバターといわれるぐらい栄養も豊富。こんな魅力たっぷりのアボカドについて、国内での取り組み事例と栽培方法ご紹介します!
アボカドはクスノキ科の果樹です。日本の植物だと、タブノキが比較的近い仲間になります。原産は中央アメリカなので、温暖かつ乾燥した土地を好みます。栄養価が非常に高く、「最も栄養価の高い果実」としてギネスブックに認定されています。
独特な味わいから日本でも人気の高まっているアボカドですが、そのほとんどが輸入されたものです。農水省の統計では、アボカドの輸入量は年10%以上の割合で増え続け、2018年には74,000t以上になっています。
一方、国内での栽培は、冬の寒さが比較的おだやかなことが条件です。生産量については、主な栽培地である和歌山県と愛媛県を合わせて2016年時点で8.1tです。
つまり、国産のアボカドは全体のうちわずか0.01%ほど、幻といってもいい希少さです。
輸入されたアボカドの多くは「ハス種」という品種です。見た目が黒っぽく、皮が厚くて固いため輸送に向いているのが特徴です。スーパーに並んでいるアボカドはほとんどがハス種ですね。
一方、国産アボカドは「ベーコン種」という品種がよく使われます。アボカドは冬の寒さに弱いのですが、ベーコン種はハス種に比べて耐寒性があるので、日本でも比較的栽培しやすい品種です。
見た目は緑色で、皮がうすいため保存しにくく傷つきやすいのが特徴です。味に関してはハス種よりも優れているといわれていて、食味の良さと希少性から国産アボカドは非常に価値が高いといえます。
アボカドの栽培で、最も適しているのは苗木を植栽して栽培する方法です。苗木は国内の生産者や種苗会社から販売されており、WEB上でも購入が可能です。 苗木の購入後はすぐに植え替えずに、購入時の鉢に十分根が張るまで成長させてから植え替えをします。
植栽後のアボカドは多量の水を必要とします。特に生育期である3月~9月には水切れを起こしやすくなるため、土が乾いたら十分に水やりをしてください。施肥もこの時期に行うのが適しています。3月と9月に1回ずつ、緩効性の肥料を与えましょう。また、花が開花するほど成長している場合は開花時期の5月頃にも追加で肥料を与えます。
アボカドは成長が早いため1~2年ごとに大きな鉢への植え替え(鉢増し)が必要です。 鉢にしっかりと根が張るまで育成した後、地面に植え替えましょう。アボカドは根がデリケートなため、根を傷めないよう慎重に作業する必要があります。
栽培をする上で避けては通れない問題が、病害虫の発生です。 アボカドに発生しやすい害虫はハダニ・カイガラムシ・コナジラミなどです。病気としては炭疽病などに罹りやすいとされています。 枝が密集して風通しが悪くなっていたり、土が常に湿っていることが原因とされているので、病害虫が発生した場合には枝の剪定や植え替えを行うことで対策できます。
アボカドは品種ごとに耐寒性が異なるため、栽培地の気候に適した品種を選ぶ必要があります。加温栽培の場合は、寒さに弱いハス種やピンカートン種でも0℃程度までの耐寒性があるので温度管理をきちんと行えば問題なく栽培できます。無加温で栽培する場合には耐寒性の強いベーコン種・フェルテ種・メキシコーラ種等が適していますが、気温が頻繁に-2~3度を下回る環境では安定した栽培が難しいとされています。
アボカドを苗木から育てた場合、実がなるまで3年~7年ほどかかります。収穫時期の10月~3月頃になったら実の柔らかさで成熟具合を判断し、収穫しましょう。
アボカドは食べ終わった種から栽培することも可能です。しかし、種から栽培した場合は果実の収穫までに5~10年かかるため、あくまで観賞用として楽しむのに適しているでしょう。 15℃以上の環境下で種の尖っている部分を上にし、土から少し頭を出して植えると約2週間~1か月ほどで種が割れて発芽します。稀に種が黒く腐ってしまう場合があるようですが、こうした種は発芽する可能性が低いので新しい種を植えなおしましょう。
夢を持った先人たちが国内でのアボカド栽培に取り組み、何年もかけてその方法論が徐々に明らかになってきました。こちらでは、国内の具体的な事例についてご紹介します。
和歌山県海南市で30年以上前からベーコン種の栽培をしている、国産アボカド栽培の先駆者です。アボカド栽培を広めるため、苗木も販売しています。
なんと雪国・新潟県でアボカドを栽培しています。ハウス栽培することで雨風や寒さから守りつつ、寒暖差を活かして質の高いアボカドをつくっています。40種以上の品種を栽培していて、収穫時期をずらしながら生産を行っています。
他にも九州の宮崎・鹿児島・沖縄や関東の千葉など、温暖な地域だけではなく様々な所でアボカド栽培が始められています!東北や北海道といった寒冷地で挑戦されている方もいらっしゃるようです。国産アボカドの収穫は10月頃からなので、数年後にはお歳暮などに国産アボカドが重宝されるようになるかもしれませんね。
以上、アボカドの国内栽培の取り組みについてご紹介しました。国内産は本当に希少なため、経済的にも伸びしろの大きい作物と言えるのではないでしょうか?
みなさんもぜひアボカドの栽培にチャレンジしてみてくださいね。
※2020.3.30 公開の記事をリニューアル更新しました。
▼参考サイト
〇日本アボカド生産者協会
https://japanavocadogrowers.com/
〇苦節10年、「日本一のアボカド産地」を目指す松山の取り組み, ハチイチペイパー
https://hachiichi.style/paper/2018/05/18/matsuyama-avocado/
〇密かなブーム。国産アボカドと種類。,コラム,豆知識,Grow Ricci
https://hachiichi.style/paper/2018/05/18/matsuyama-avocado/
〇作れば売れる国産アボカド 柑橘栽培からの移行で過疎地の生産者を救う,生産技術,マイナビ農業
https://agri.mynavi.jp/2019_11_14_95452/
〇GreenSnap「アボカドの育て方|種から栽培する方法は?発芽や水やりのコツは?」
https://greensnap.jp/category1/kitchenGarden/botany/218/growth
〇農研機構 アボカド・パッションフルーツ「栽培の手引き」リーフレット集
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/201903nivfs_avocado_pfruits_tec_manual.pdf
〇株式会社大和
https://daiwa.wikiplus.net/product_201707281104224.html
〇農林水産省 高度施設園芸・植物工場 事例集
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/pdf/daikibo_2.pdf
ライタープロフィール
【内村耕起】
宮崎県の牛農家生まれ。大学院で植物工場での廃棄物利用に関する研究に従事したのち、全国の農家を訪ね歩いてファームステイ。岩手県の自然栽培農家で2年間の農業研修を経て、現在は宮崎県の山間部の村で自給的農業を営む傍ら、ウェブライターなどもしています。