コラム
公開日:2020.05.29
きゅうりは野菜の中でも出荷の規格が厳しい野菜です。均一な太さが求められ、たった数cm曲がるだけでも等級が下がってしまいます。もちろん見た目が悪くても美味しいきゅうりはできますし、家庭菜園ならそれで十分です。しかし、農家として形の美しさや品質にこだわったきゅうりを出荷しようと思ったら、それなりの育て方が求められます。
そこで今回は、出荷を前提とした品質の良いきゅうりを栽培するための5つの方法をご紹介します。
※今回は出荷規格を参考に、以下の3つのポイントを満たすきゅうりを高品質(A等級)とします。
①肩こけ、尻太り、尻細りが無い。②病害虫、損害が無い。③曲がりが1.5cm以内。
高品質のきゅうりを栽培するために、以下の5つのポイントを押さえましょう。
きゅうり栽培に乾燥は大敵です。乾燥・高温条件下では曲がり果が発生しやすく、湿度や土壌水分の不足は尻細りの原因となります。水やりはムラが無いように気を付け畝全体が湿っているかチェックしましょう。
また、昼間の湿度は70~80%位を保ちましょう。特に冬場は、換気の仕方によってはハウス内でも湿度が50%以下になることがあるので気を付けましょう。湿度の確保には通路への潅水も効果的です。
きゅうりは栽培期間が長いので肥切れを起こさないように気を付けましょう。追肥は収穫開始5~10日ごとにこまめに行い、生育に応じて液肥を潅水します。
流れ果は樹勢が弱まっているサインです。追肥や葉面散布で樹勢の回復を図りましょう。また、曲がり果は成り疲れのサインです。肥料を葉面散布すると早期の回復が見込めます。成り疲れを防ぐには果実がMサイズくらいの大きくなりすぎないうちに収穫することも重要です。
きゅうりが起こしやすい生理障害について解説します。
◆流れ果:雄花が咲いたのに実が大きくならず、黄変したりしぼんでしまう症状です。
光合成が不足していると発生しやすくなります。
◆曲がり果:その名の通り実が曲がってしまったきゅうりです。光合成、栄養、水分などが不足すると発生しやすくなります。
ネットなどに当たり、物理的に曲がる場合もあります。
◆尻太り果:先端にだけ種子ができて、お尻のあたりだけが肥大化したきゅうりです。
日照条件が悪いときに発生しやすくなります。
尻太り果とは反対にお尻のあたりが細くなってしまう場合もあります。このような変形果が見られたら、早めに対策しましょう。
きゅうりは支柱やネットにつるを誘引して栽培しますが、どちらの場合も摘葉や摘心による整枝が重要です。摘葉しすぎると尻細りや尻太りになりやすいので、一度の摘葉は2枚以下にします。また、摘葉・摘心がきつく栄養過多になると、肩こけが起こりやすくなります。
子づるは、2節目までを残して先端を摘心します。樹勢は節を変えることで調整できます。特に中段の子づるは弱くなりやすいので状況に応じて摘心を遅らせましょう。
一方で、葉が茂りすぎて果実に光が当たらないと尻細りや曲がりの原因となります。摘葉の際は日当たりに気をつけましょう。
生育適温が決まっているので地域の栽培暦からかけ離れた時期に栽培を行うことは避けましょう。地温が低いと肩落ちになりやすいのでカーテンやマルチなどで地温が18℃以上になるようにします。
定植後は日中25~28℃、夜間13~14℃が目標です。高温や高夜温は尻太り、低温や低夜温は肩落ちの要因です。温度を下げるには換気に努め、低温時は必要に応じて暖房機による加温を行いましょう。
栽培期間が長いと様々な病気が発生するため、病害虫防除が重要です。灰色かび病やウイルス病、アザミウマなどは生育を悪化させるだけでなく果実も害します。
農薬は予防散布に重点を置き、防虫ネットで害虫の侵入を防いだり適度な換気で湿度を下げて病気の発生を防いだりと発生予防に力を入れましょう。
水やり、追肥、摘葉と摘心、温度管理、病害虫防除の5つのポイントに気を付けて、品質の良いきゅうりを沢山収穫しましょう。形が整っているきゅうりは箱詰も簡単なので出荷作業も楽になりますよ。
▼参考サイト
〇きゅうりの奇形果と発生要因、株式会社久留米原種育成会
http://kurume2006.web.fc2.com/kyurinokikeika_hasseiyouinn/kyuri_kikeika_hasseiyouinn.htm
〇【野菜】キュウリの年間栽培体系(肝属地域)、鹿児島県
http://www.pref.kagoshima.jp/ao08/chiiki/osumi/sangyo/nougyou/gijutsu/kimo_cucumber_cultivation.html
〇キュウリの生理障害,きゅうり栽培Q&A,キュウリの育て方.com
https://kyuri-sodatekata.com/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%83%AA%E6%A0%BD%E5%9F%B9qa/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%90%86%E9%9A%9C%E5%AE%B3.html
▼参考文献
〇出荷規格表 果菜類、JA全農広島
https://www.jazhr.jp/syukkakikaku/img/kikaku01.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。