コラム
公開日:2025.12.11

※本記事は2020/12/24に更新した記事をリニューアルした記事です
野菜の茎がなんだかひょろ長く伸びて頼りない。このような症状が出たら「徒長(とちょう)」かもしれません。徒長とは、様々な原因によって茎が通常よりも長く伸びることを指します。
徒長は栽培中、いつ起きてもおかしくありませんが、苗の徒長は特に注意が必要です。徒長苗は倒れやすく定植しにくいうえ、その後の生長や実付きも悪くなりがちです。
深植えなどでリカバーできる場合もありますが、できるだけ徒長のない健全な苗を育てることが大切です。
また、水耕栽培では環境変化が苗に影響しやすいため、徒長対策をより丁寧に行うことが重要です。
この記事では、徒長の原因と対策方法をご紹介します。

徒長は、日照不足、高温、過湿、風通しの悪さ、密植、窒素過多が原因で起きることがあります。 ここからは徒長の原因と対策を6つにわけて、詳しく解説していきます。
※果樹など樹木の徒長枝は意味合いが異なりますのでこの記事では扱いません。

植植物の生長に光は欠かせません。光が不足すると、植物は 光を求めて光の方向へ徒長します。
光の当たる方向が常に同じ場合には、光の方向へ曲がって生長することもあります。梅雨時や日照時間の短い秋冬は日照不足に注意が必要です。
よく日の当たる場所で育てることが一番の対策 です。育苗中に芽が一方向に傾いて伸びるようなら苗床を180度回転させ光の当たる向きを変えましょう。
光が入らないと徒長しやすくなるため、 冬季に発芽目的で不織布のべたがけなどを行う場合は、発芽を確認したらすぐに外します。

高温時の育苗は、徒長の原因となります。トマトやイチゴなど、 夏季に育苗を行う場合は徒長しやすいため、注意しましょう。
栽培適期を守りましょう。昼間は換気に努め夜間もできるだけ温度を下げるようにしましょう。

水の与えすぎは徒長の原因です。特に、レタスなどは水分が多いと徒長しやすいため、水分管理に 気を付けましょう。
苗への水やりは朝に行い、夕方以降は控えましょう。夕方には土の表面が乾いているくらいで大丈夫です。トマトやナスなど、育苗期間の長い場合には、徒長を恐れて水やりを控えすぎると苗への養分供給も減少し、良苗になりません。後に奇形果や石ナスができやすくなるため、注意しましょう。

程よい風は、徒長抑制の効果があります。無風状態だと徒長することがあるため、屋内やハウスで育苗する際には気を付けましょう。
屋内などで育苗する場合、暖かい時は窓を開けたり苗床を屋外に出したりしましょう。

密植すると株同士が競いあって伸びます。特に過密状態で発芽した芽はカイワレ大根のように徒長します。
しっかり間引きを行うことが重要です。株同士の葉が触れないくらいの株間を確保しましょう。

生長を促す肥料も徒長の原因です。特に茎葉の生長に重要な窒素成分を与えすぎると徒長しやすくなります。
窒素過多にならないように気を付けましょう。特に水耕栽培や養液栽培では、水も肥料も吸い放題なので、施肥管理に気を配ります。たとえば、トマトは上位葉が内側に巻いて暴れるなど、窒素が多くなっている“サイン”を見逃さないことが大切です。
以上、この記事では徒長を防止するために知っておきたい主な原因と対策について紹介しました。
徒長の原因は上記のいずれかに当てはまることがほとんどです。どの場合も簡単な対策で防ぐことができます。また、苗を丈夫に育てるためにはカルシウムの補給も有効です。細胞壁が強くなることで、徒長しにくい株づくりに役立ちます。
しっかり対策を行い、徒長のない良い苗、良い野菜を育て、沢山の実りを得ましょう。
▼参考文献
〇秋田県野菜栽培技術指針 葉茎菜類,農林水産省
http://www.musaseed.co.jp/disease/%E8%BB%9F%E8%85%90%E7%97%85/
▼参考サイト
〇山田式家庭菜園教室 果菜類の失敗しない苗づくり,タキイ種苗株式会社
https://www.takii.co.jp/tsk/y_garden/spring/point02/index.html
〇園芸通信 タネまきから苗育てAtoZ 【第11回】徒長、立ち枯れ、カビ、コケをどう乗り切る?!,株式会社サカタのタネ
https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/premium/howto_mitsuhashirieko_01/20171128_005942.html
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。