コラム

栄養成長と生殖成長の違いとは?植物が成長する環境づくりとその方法

公開日:2022.05.20

作物の栽培方法を調べていると、「栄養成長」や「生殖成長」という言葉をよく目にしますよね。「なんとなく使っているけれど、違いがよくわからない」という人も多いのではないでしょうか?この記事では、栄養成長と生殖成長にまつわる基本的な情報をまとめました。この機会に2つの言葉の意味や管理の方法を確認しておきましょう。

1. 栄養成長と生殖成長の定義

●栄養成長とは?
葉・茎・根など、植物の体をつくる器官(=栄養器官)が形成されること


●生殖成長とは?
花芽や果実など、子孫を残すためにつくられる器官(=生殖器官)が形成されること


植物は、発芽してからの一定期間は栄養成長で体を大きくし、その後さまざまな条件が揃ったタイミングで生殖成長を始めるようになります。

2.【野菜タイプ別】栄養成長と生殖成長のパターン

種まきから収穫までの間、栄養成長と生殖成長はそれぞれどんな風に起こるのでしょうか?ここからは、野菜のタイプ別に3つの代表的な成長パターンを見ていきましょう。

栄養成長期に収穫する野菜

栄養器官である葉・茎・根の部分を大きく成長させ、生殖成長が始まる前に収穫するタイプの野菜です。栄養成長から生殖成長に切り替わり、花芽の形成やトウ立ちが起こると、収量や品質が大きく低下してしまいます。
(例)コマツナ・ホウレンソウ・キャベツ・タマネギ・ダイコン・ニンジンなど




栄養成長から生殖成長に転換した後に収穫する野菜

葉や茎などをある程度発達させた後、生殖成長でつくられる花(蕾)や果実の部分を収穫する野菜です。適切なタイミングで栄養成長から生殖成長に移行させてあげることが栽培のポイントです。
(例)スイートコーン・ブロッコリー・カリフラワーなど




栄養成長と生殖成長が同時進行する野菜

栄養成長から生殖成長に完全に切り替わるのではなく、両者が並行して起こるタイプの野菜です。栽培のポイントとなるのは、生育ステージに合わせて栄養成長と生殖成長のバランスをとること。栄養成長に傾き過ぎると葉や茎が必要以上に茂って(過繁茂)花や果実がつきにくくなり、反対に生殖成長に傾き過ぎると、果実は多くつきますが葉や茎が弱体化し、生育が進むにつれて収量や品質が低下する「成り疲れ」に陥ってしまいます。
(例)トマト・キュウリ・ナス・スイカ・カボチャなど

3.栄養成長と生殖成長の管理方法

収量や品質を向上させるためには、成長パターンに応じて栄養成長と生殖成長のタイミングや勢いを管理する必要があります。その方法は作物ごとに異なりますが、カギとなるのは温度や日長、植物体内の窒素と炭素の割合などです。

例えば、窒素の施用や潅水が十分すぎる場合は栄養成長に、窒素や灌水が不足している場合は生殖成長に傾きやすくなるのが一般的です。細かな生育の見極めが必要になる難しい作業ですが、環境制御装置でハウス内の温度、湿度、日射量、CO₂濃度などを総合的に管理したり、潅水、施肥、着果数などの栽培管理を工夫したりして、成長を上手にコントロールしましょう。


以上、栄養成長と生殖成長の基本的な知識について解説しました。まずは、栽培している作物の成長パターンをしっかりと把握することが第一歩です。環境のモニタリングと生育の様子を研究しながら、管理方法を改善させていきましょう。

  • ▼関連記事






▼参考文献
○野菜づくりの基礎知識(滋賀県)
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/1049287.pdf
○施設栽培の収量や品質を向上させたい方へ(神奈川県)
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/28279/870965.pdf
▼参考サイト
○農業・園芸用語集(タキイ種苗株式会社)
https://www.takii.co.jp/glossary/kensaku.html
○植物Q&A(日本植物生理学会)
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=0311

ライタープロフィール

【にっく】
農業研究所の研究員として日本全国を飛び回ったり、アフリカ・東南アジアで農業技術普及プロジェクトに携わったり…国内外の農業に関わってきた経験を持つ農学博士です。圃場作業で汗を流すのが大好き。これまでの経験と知識を生かして、わかりやすい記事をお届けします!







Facebook




Twitter