コラム

花き農家必見!切り花の日持ちを長くさせる「品質維持に効果的な方法」

公開日:2023.03.22

消費者が切り花を購入する際に最も気になっている「日持ち」。出荷する際は問題なくても、消費者の手にわたる頃には日持ち性が低下している場合もあり、花離れの原因のひとつになっているとも言われています。そこで今回は、切り花の品質が低下する原因や日持ち性を向上させるために生産者が知っておきたい管理方法をまとめました。

1.切り花の品質が低下する原因

花の品質が低下してしまう原因は大きく分けて4つ。花の種類によっても違いがあるのでひとつひとつ詳しく見ていきましょう。




原因①エチレン

エチレンは野菜や果物の老化を促進させる植物ホルモンのひとつです。多くの切り花がエチレンによって老化促進されますが、ガーベラやチューリップなど中にはあまり影響を受けない花もあります。エチレンの影響を特に受けやすい花は、カーネーション、シュッコンカスミソウ、スイートピーなどがあり、これらの花はエチレンの老化促進作用を防ぐための処理が必要になります。




原因②水揚げの悪化

切り花を出荷する前には、水を吸水させるための水揚げを行います。しかし、やり方によっては吸水するよりも蒸散する水分の方が多くなり、水揚げがうまくいかないことも。
水分の蒸散は葉の裏にある気孔を通して行われていますが、この気孔は明るい場所だと開きやすいということがわかっています。また、湿度の低さなども関係してきます。そのため、水揚げを行う際は湿度を高めた暗所で行い、不必要な葉は取り除いておくことも重要です。




原因③糖質不足

植物が育つ上でも糖質は重要なエネルギー源です。しかし、切り花は暗所で扱われることが多く、光合成ができないために糖質濃度が低下してエネルギー源が不足した状態になります。特にバラは糖質不足による品質低下が起こりやすく、日持ちが短縮したり蕾が完全に開花できなくなるということがあります。




原因④葉の黄化

キクやアルストロメリアといった花では、花そのものはきれいな状態であっても葉が黄化して観賞価値をなくしてしまうことがあります。キクの葉が黄化するのは、エチレンによるものと考えられているので老化促進作用を阻害する処理を行う必要があります。

2.切り花の日持ちを高めるためにできる4つのこと

切り花の日持ち性を高めるには流通の各段階において適切な処理を行うことが重要です。ここからは、生産者が行うことで花の日持ちを長くする管理のポイントを紹介します。




ポイント① 栽培時の温度や湿度に注意する

切り花の日持ちは栽培する環境や生産方法によっても変わってきます。たとえば高湿度の条件で栽培された切り花では、気孔の働きが阻害されてしまうため蒸散過多になり、日持ちが悪くなると言われています。温度や湿度が高くなりすぎていないか、灰色かび病などの病気にかかった花をそのままにしていないかなど、施設内の環境を整え衛生管理にも注意を払うようにしましょう。






ポイント② 収獲は朝か夕方に行う

日中の暖かい時間に収獲すると、花自体の温度が上がりやすく品質の低下につながります。収獲は朝か夕方の涼しい時間帯に行うようにしましょう。






ポイント③ 適切な前処理を行う

切り花は収穫後すぐに水揚げを行うことが重要です。特に品質が低下しやすい花は、冷蔵庫内などの涼しい場所で抗菌剤が含まれた品質保持剤を使用して水揚げします。また、カーネーションやスイートピーといったエチレンの影響を受けやすい花は、STS剤を用いて水揚げを行うことで日持ち性を高めることができます。






ポイント④ 花の種類に適した輸送方法を選ぶ

花の輸送では、常時水分を供給することができる湿式輸送で出荷することが推奨されています。この方法で輸送を行うと鮮度が保持されるので切り戻しの作業も不要です。花を立てた状態で輸送するため、茎が曲がりにくく、花弁が傷みにくいといったメリットもあります。 ※ただし、ユリやグラジオラスといった吸水によって開花が促進される花には湿式輸送は向かないので、このような花では乾式輸送を選択します。


3.花の日持ちを向上させるには温度×時間も重要

花の日持ちを向上させるためには、収穫後の積算温度も重要な要素のひとつです。最近では、1週間の日持ち保証を行っているお店も見かけますが、これを実現するためには生産地から出荷し、小売店に届くまでに『1,000温度時間値』を目標にする必要があります。

たとえば、平均気温20℃で、収穫後2日以内に小売店に届いた場合、そこから3日以内で販売することができれば消費者は1週間程度きれいな花を楽しむことができる計算です。この積算温度を管理できれば、消費者が花の購入をためらう理由の一つ「日持ち問題」の解決につながります。しかし、一度出荷してしまえば流通過程でどのように扱われているかを確認するのは困難なことです。

そんなときに活用していただきたいのが、インパック株式会社が北海道大学との共同研究を行い開発した「TTtimer」というフレッシュネスメーターです。この商品は、出荷箱に貼るだけで流通過程での積算温度を一目で確認することができます。



※アグロ・イノベーション2022 インバック(株)ブースより


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生産段階での管理も重要ですが、こういったアイテムも併用することで日持ち性を高めることが可能になります。切り花の日持ちを長くする方法を探しているという方は、今回紹介した管理方法なども併せて参考にしてみてください。






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▼参考文献
〇農研機構 花き研究所「日持ち保証に対応した切り花の品質保持マニュアル」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/files/cb160bab2b4d663b9ba036741ffc9904.pdf
〇株式会社大田花き「1,000温度時間値で、店頭まで届けよう」
https://otakaki.co.jp/pres/1000%E6%B8%A9%E5%BA%A6%E6%99%82%E9%96%93%E5%80%A4%E3%81%A7%E3%80%81%E5%BA%97%E9%A0%AD%E3%81%BE%E3%81%A7%E5%B1%8A%E3%81%91%E3%82%88%E3%81%86/
〇株式会社守重本店「TTtimer」
https://morishige-honten.jp/works/tti/


ライタープロフィール

かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。 家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。









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