【元JA職員が農家になるまで】vol.2『がんばる新農業人支援事業』の研修生になるまで

こんにちは。関野です!前回は私がJA職員から農家を目指すことにした理由をご紹介しました。 今回は、就農を相談した農家さんに教えてもらった『がんばる新農業人支援事業』に応募し、研修生として合格するまでのことをお話します!

1.がんばる新農業人支援事業って?

静岡県農業振興公社で毎年募集している、自立就農を目指す研修制度です。静岡県の西部・中部・東部の各エリアの特産物(トマトやイチゴ等)を選び、その特産物を栽培している受入農家さんのもとで研修をしながら農業経営や栽培技術を学びます。1年後には農業経営者としての独立を目指すことができます。募集区分は3つあり、私はその中の「新人材育成タイプ(地域受入型)」に申し込みました。

研修生になるまでの流れ

研修生として合格するまでの流れは、
【申し込み】→【現地見学】→【面接】→【合格】
という形です。

申し込みには、申込書と履歴書が必要で、申込書には「就農理由」、「将来の取り組み」、「自己資金」、「研修希望先の地域・作物」などを記入します。

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「就農してから将来どんなことに取り組むか」を記入します。私は「SNSを活用した地域農業振興と地元の情報を発信していきます」と書きました!
また、自己資金はとても重要です。作物、栽培面積、設備によって異なってきますが、私の場合は高級車1台分くらいのお金を用意していました。

2.現地見学会に参加

申し込みを済ませると、現地見学会のお知らせがきます。静岡県の各地域で日程が割り振られているので、希望する地域を選んで申し込みます。現地見学会に行かなければ面接を受けることができないので申し込みは必須です。
私の場合は、伊豆の国・三島函南地域のイチゴ・ミニトマトの農家さんの現地見学会に行きました。見学会は応募した方々を乗せて現地を回るバスツアー形式で、農家さんのハウスを見学して、お話を聞き、質疑応答という流れで行われました。
帰り際に、面接を希望する農家さん(受入農家)を記入する面接申込書を渡されて解散しました。

▲受入農家さんのハウス

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見学会の雰囲気は全体的に緊張した空気でしたが、受入農家さんの人柄やハウス・施設の雰囲気など行かなければわからない事を知れて、とても良かったです。ハウスの内がゆっくり見られ、設備などかっこいいと感じました。

3.就農に向けて緊張の面接

現地見学会を終えると、いよいよ面接です。
コロナ禍の為リモートで、15分~20分くらいの時間をかけて、市役所・農協・受入農家・県職員の4名の方と面接しました。「就農理由」、「就農への意気込み」、「ミニトマトを選んだ理由」、「自己資金」などはもちろん、独身だとパートナーとなる方がいるかを質問されます。他には申込書に書いた自己資金だけでなく、借入の有無などお金のこともシビアに質問されました。
結果、雰囲気に飲まれてしまい、伝えたい事や受け答えもうまくいきませんでした。リモートで声などが伝わっているかわからない不安と緊張で押しつぶされていました。

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申込書・面接申込書に第一希望だけ記入していた事がとても好印象を持たれました。もし初めから第一希望を決めているなら、第二・第三希望は書かないという手もあります。

面接後、郵送で合否のお知らせが届くのですが、無事に合格することが出来ました!
合格すると、受入連絡会と連絡を取って研修開始時期について話し合います。この合格で研修生として認められ、受入農家さんの指導を受けられるようになるのです。

今回活用した制度です。ぜひ参考にしてください!

●がんばる新農業人支援事業について(静岡県農業振興公社HP)

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ライタープロフィール

【関野 陽平】
静岡県伊豆の国市出身。
2017年にJAを退組し、ワーキングホリデーでオーストラリアへ渡航。そこで経験したファーム生活で農業への興味が湧き、大好きな地元:伊豆の国市で農家になることを決意。 帰国後「がんばる新農業人支援事業」に応募し、合格。受け入れ農家の元で研修に励み、晴れてミニトマト農家として独立。
2021年12月にハウスが完成し、2022年3月にミニトマトの初収穫を迎えた。

【元JA職員が農家になるまで】vol.1 JA職員から農家を目指すきっかけ

こんにちは。関野です!この連載企画では、私がJA職員から農家になるまでの道のりをブログ形式でお伝えしていきます。これから農家を目指す方の参考になればうれしいです! まず今回は、私がJA職員から農家を目指すことにした理由についてお話します!

1.地元密着のJA職員時代

JA職員の頃は、地元だった静岡県伊豆の国市で農薬・肥料・営農資材の販売をしていました。来店されるお客様は地元の方(主に農家さん)と観光の方がほとんどで、地元の方が来たときは「地元の役に立ちたい!」、観光の方が来たときは「地元を知ってもらえるチャンス!」と思い日々接客していました。
また、観光の方に伊豆の国市の魅力をもっと知ってもらいたいとの思いから、オリジナルの看板や観光案内掲示板を自分で作ってお店に飾ったり、地域の観光・旅館・お土産等のパンフレットを一件一件回って集めてお店に置いたり、お店の雰囲気づくりにも注力しました。
「また、伊豆の国市にきてほしい」
そんな気持ちで仕事をしていました。

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地元の消防団に所属し、SNSを活用した消防団の情報発信に情熱を注いでいました!年齢や職種を超えた地元の先輩、後輩と出会ったことでより一層、「生まれ育ったこの地に貢献したい!」という想いは強くなり、仕事でもプライベートでも地元“伊豆の国市”に密着した生活を送っていました。

2.農家転身のきっかけはワーキングホリデー

農家を目指すきっかけになったのは、29歳の頃にミニトマト農家さんから勧められたワーキングホリデー(通称ワーホリ)です。ワーホリのことを知らなかったので調べてみると、若い方が日本の協定国海外に渡航して異文化交流ができるもので、その間の滞在資金を得るため一定の就労ができるという制度です。
渡航できる年齢は30歳までと知り、
「一度きりの人生の中で色んな経験・挑戦をしたい」
「環境を変えて自分と向き合う時間を作りたい」
「思い切って海外生活に挑戦したい」

と思い行ってみることにしました。
社会人になって初めて自分の事で将来・未来を考えた行動が出来たと感じています。

渡航先は、オーストラリア。英語は全く話せませんでしたが、入国してから初めの4ケ月間は語学学校に通い、少し会話ができるようになりました。語学学校卒業後は、セカンドビザの取得を目指してファーム生活に挑戦することにしました。セカンドビザは、オーストラリアの指定職種(主にファーム)で3ケ月間従事することでもう1年延長できるビザです。ワーホリで訪れる人の大半は、このビザを求めてファームに挑戦します。

ファーム生活が楽しくて、トータルで1年4ケ月間過ごしました。

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ファーム選びは、どんな地域で?どんな仕事で?いつがシーズンか?を調べておく事がとても重要です。私は、シェアハウスのオーナーからもらった情報を頼りに、車で現地を駆け回り、スタンソープでファーム生活を送ることになりました。お陰様で農家転身へのきっかけとなる農業体験ができました。

3.ファーム生活で得られたこと

ファームで経験した仕事は、野菜の収穫です。ブロッコリー・キャベツ・レタス・カリフラワー等を収穫しました。朝4時30分から最長11時間以上の収穫作業をした事もあります。オーストラリアの広大な畑と大きなトラクターがとても印象的でした。

▲ファーム先で撮影したトラクター

オーストラリアは1日の温度差や気候の変化も激しく、急に雨や雷になることもあります。それでも作業は続けるため辛いときもありました。その分、国籍や年齢に囚われず、目標に対し団結する力・達成感を味わうことができました。今までは、農業に対して大変なイメージしかありませんでしたが、実際に経験することで農業に興味が湧きました。

▲ワーホリの景色と仲間たち

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イチゴ農家の祖父を見ていて、農業は大変というイメージでしたが、祖父は地元で顔が広く、人との繋がりが深かったので、憧れの存在です。祖父を超える人望の厚い農家になりたいと思っています。

ある日、満天の星空を見ながら一人で将来のことを考えていました。
JA職員の頃、動画での発信をしたいと思っていました。直売所の1日や、直売所の裏側、熟練・若手農家さんへのインタビュー、おすすめ地元お土産案内etc…農協直売所だからこそできる事がたくさんあり、構想は膨らんでいきました。しかし、大きな組織では個人の意見が反映されにくいことに気づきました。
だから今度は、個人で、農家として地元の農業を伝えることを目指したいと思いました。
「大好きな地元で一生仕事をしていきたい」
「地元の人ともっと関わっていきたい」

と思い、農家になる事を決めました。
自分の将来についてじっくりと考えられる時間は、とても贅沢な時間でした。ワーホリを体験して本当によかったです。

帰国後、ワーホリを勧めてくれたミニトマト農家さんに会いに行き、農家になりたいと相談しました。そこで“がんばる新規就農支援事業”を教えてもらったのです。

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ライタープロフィール

【関野 陽平】
静岡県伊豆の国市出身。
2017年にJAを退組し、ワーキングホリデーでオーストラリアへ渡航。そこで経験したファーム生活で農業への興味が湧き、大好きな地元:伊豆の国市で農家になることを決意。 帰国後「がんばる新農業人支援事業」に応募し、合格。受け入れ農家の元で研修に励み、晴れてミニトマト農家として独立。
2021年12月にハウスが完成し、2022年3月にミニトマトの初収穫を迎えた。

移住・新規就農した55人全員が独立成功!農家になるなら静岡県伊豆の国市がおすすめな3つの理由

静岡県伊豆の国市は、トマト、ミニトマト、イチゴ、わさび、ミカン、セルリー、レタスの産地です。 15年以上前から、「いちから農業を始めたい!」と挑戦する新規就農希望者を受け入れてきました。中でもミニトマト農家が集う果菜委員会では、今までに静岡県全体の約1/3にあたる55名の新規就農者を受け入れ、1人の脱落者もなくミニトマト農家として成功しています。

成功できた3つの理由について、ここから詳しくご紹介していきます!





理由1.補助金・支援・サポートが充実している

JA伊豆の国では、「がんばる新農業人支援事業」という制度があります。 他県から「伊豆の国市で農業を始めたい!」と農家を志す方を対象に、受入農家で1年間農業の栽培技術や経営のノウハウを学び、独立を目指すことができる制度です。 静岡県全体では、過去15年間で178名が研修・就農定着率98%というから驚きです。

概要は以下の通りです。

●応募資格
・概ね45才未満の非農家または第2種兼業農家の出身者
・就農意欲が高く、研修終了後は研修受入地域に就農できる方
●研修期間
事前研修:2か月程度 / 実践研修:1年間

※引用:静岡県HP


他にも、静岡県の「農業次世代人材投資事業」、日本政策金融公庫の「青年等就農資金」、国の「経営体育成支援資金」といった資金確保をするための制度があります。 自己資金が少ない方も、新規就農者向けの制度や補助金を使ってサポートしてもらえるかもしれません。「資金がないから…」と諦めず、まずは一度相談してみましょう。

がんばる新農業人支援事業に関するお問い合わせ
JA伊豆の国 営農販売課



理由2.仕事もプライベートも相談できる先輩が多い

伊豆の国市の若いミニトマト農家は、ほとんどが他県からやってきたニューファーマーと呼ばれる新規就農者です。IT関連や自動車メーカーなど、農業とは畑違いの職業からの就農が多く、中には大手企業から就農した方もいます。15年以上ニューファーマーを受け入れてきたことで、今では55人の先輩農家が農業に関すること、経営に関すること、家や生活のことまで相談に乗ってくれます。
百聞は一見に如かず。ぜひ一度どんなニューファーマーの先輩たちがいるのか?どんな雰囲気なのか?見学に行ってみてはいかがでしょうか。

令和3年度の見学会の申し込み
JA伊豆の国 営農販売課


先輩ニューファーマーに相談してみたい方





◆◆ 先輩ニューファーマーの体験談 ◆◆







理由3.自然が多く、住みやすい街である

伊豆の国市が新規就農者に選ばれる三つ目の理由が、住みやすさです。 温暖な気候である伊豆の国市には、東海道新幹線 三島駅から伊豆箱根鉄道で15~20分程度。都心へは1時間半程度で行けます。伊豆の国パノラマパークや伊豆・三津シーパラダイス、箱根駒ヶ岳といった観光地や温泉が多いエリアです。 海・山・川といった多くの自然に囲まれ、釣りやキャンプを楽しんだりできます。自然豊かな土地で子供をのびのびと育てることができるのもうれしいポイント。大きな病院もあって医療体制が整っており、安心です。 また、晴れた日には目の前に「富士山」を見ることができます。この絶景も伊豆の国市に住む大きな魅力の一つです。




伊豆の国市での就農に興味がある方は、一度見学会に参加してみてはいかがでしょうか。未だ見ぬ新しい人生が待っているかもしれません。 現在、令和3年度の見学会受付中です。ニューファーマーたちの収入は?年収は?儲かるの?失敗しないの?具体的にはどうやって農家になるの?…そんな疑問も見学会で聞いてみましょう。

ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪


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