コラム
公開日:2020.05.12
農業の中でも、施設園芸における環境制御は技術進化が最も著しい分野です。今回は環境制御装置を導入したいけど「たくさんあって何から検討して良いかわからない」という方のために、環境制御の基本的な考え方や装置を導入する際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
そもそもビニールハウスは、いわゆるパイプハウスであっても、植物を雨から守ったり保温したりと環境を制御するために存在しています。つまり環境を制御しようとする考え方は高価な装置を導入する・しないに関わらず、施設園芸の基本的な考え方にあるわけです。
現在、施設園芸分野で環境制御という場合、一般的には地上部の制御のことを指します。具体的には作物の周りの「温度・湿度・CO2濃度・光環境」の4つを調節することを言います。
例えば「光環境の制御」では、天気を変えることはできませんが、光環境を制御できるポイントはたくさんあります。被覆資材の素材、遮光(熱)ネットの遮光率、マルチの色、被覆資材の掃除する頻度、ハウスの柱の塗料といったもので光環境をコントロールすることができます。
環境制御装置を導入する前におさえておきたい3つのポイントをご紹介します。
「温度・湿度・CO2濃度・光環境」を制御する装置やシステムの導入を検討する前に、どの環境要因を変化させたらどの程度収穫量に差が出るのかという、環境と植物生理の基本的な知識を学んでおく必要があります。
生産技術や装置の開発が特に進んでいるトマト類は、事例も豊富なため学びやすいです。 おすすめの書籍は以下の3点です。
①「養液栽培のすべて 〜植物工場を支える基本技術〜」
発行:(社)日本施設園芸協会/日本養液栽培研究会 共編
②「野菜園芸学の基礎(農学基礎シリーズ)」
発行:農山漁村文化協会
③「環境制御のための植物生理:オランダ最新研究」
発行:農山漁村文化協会
例えばCO2発生器の導入を検討する前に、まずは圃場のCO2の推移を測定してみることをお勧めします。
外のCO2濃度は一般的に400ppm程度なので、CO2濃度が低ければ、場合によっては数時間だけハウスを開け放つだけで効果が出るかもしれません。 (例えば、促成栽培の場合は気温とのトレードオフになるため、慎重な検討が必要です。)
装置を導入する前に、計測に基づいて出来る実験はたくさんあります。
業者さんに環境制御に関する相談をする場合にはぜひ、導入実績のある農家さんを紹介してもらいましょう。使い勝手はどうか、実際に収穫量の変化はどうだったか等、生の声を聞くことが重要です。
実際に環境制御に取り組んでいる農家さんの声を集めました。
僕の代になってから環境制御を始めました。果樹は通常、露地で栽培するため天候や自然の影響を受けます。しかしハウスだと、温度も湿度も水も自分で管理ができる。光もCO2も制御できる。夏になってハウス内の気温が上がったら、ヒートポンプで涼しくすることもできる。環境制御もここまでくると手札が溢れているので、色々なことが出来ます。収益を大きく上げる事もできるし、収量をがっつり取る事もできます。
炭酸ガス発生機を入れたことによって収量が何割かアップして経済効果もありましたが、その分過度な炭酸ガス施用も多かったです。炭酸ガスコントローラーを導入してからは、濃度がはっきり分かるようになり、正しい濃度の設定ができるようになりました。
導入前は、遮光をするしかなかったのですが、飽差を管理するようになってからあまり遮光をしなくても適度な蒸散がコントロールできるようになり、よい苗ができるようになりました。葉に丁度良い水分が残ります。6~7℃は隣の(飽差管理を行っていない)ハウスに比べて下がりましたね。
まずは、制御すべき環境「温度・湿度・CO2濃度・光環境」についての概要を把握し、環境制御装置やシステムを導入しなくてもできることをやってみましょう。その上で、環境制御装置の導入を検討していくことが大切です。
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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