コラム
公開日:2020.07.03
キノコバエ類はキノコに良く発生し、住宅に発生する生活害虫としても知られています。野菜栽培では主にクロバネキノコバエ類が問題になります。成虫は体長数ミリと小さく、黒色で蚊のようなコバエです。乳白色でウジ状の幼虫が野菜の地下部を食害します。
クロバネキノコバエ類は様々な種類がありますが、これまでは大量発生しなければあまり問題になりませんでした。しかし、最近新しく確認されたネギネクロバネキノコバエ(以下ネギネ)は大きな被害をもたらし生態も異なっています。名前の通りネギやニンジンは被害が出やすく注意が必要です。
そこで、ここからは被害の大きいクロバネキノコバエ類について、発生原因とおすすめの対策方法についてお伝えしていきます。
チバクロバネキノコバエ(別和名:チビクロバネキノコバエ)やジャガイモキノコバエなどネギネ以外のクロバネキノコバエ類は、未熟な有機物を好みます。未熟な堆肥や有機肥料に成虫が産卵し、幼虫はこれらの有機物を餌にします。刈り取った雑草や収穫残さも発生源になります。
大量発生した場合には餌が足りず、新鮮な植物の根や地際部を食害します。
一方ネギネの幼虫は最初から新鮮な植物の地下部に寄生します。幼虫は地中で越冬するため根付いた収穫残さは恰好の発生源です。
こちらではキノコバエの対策法6つをご紹介します。
クロバネキノコバエ類は、水はけの悪い場所で多く発生する傾向があります。圃場に水が溜まらないように、暗渠(あんきょ)を設置する・排水路を清掃するなど、排水対策を行いましょう。過度の潅水に気を付け換気に努めることも重要です。
多くのクロバネキノコバエ類は未熟な有機物を好むため、堆肥は完熟堆肥を使用します。鶏糞や魚肥などの有機質肥料の大量施用は避けましょう。また雑草は刈り敷きせず処分しましょう。
ハウスに1mmメッシュ以下の防虫ネットを張り成虫の侵入を防ぎます。
ハウスに黄色粘着トラップを設置して成虫を捕獲します。インターネットで「コバエ ホイホイ作り方」等と検索すると、簡単なペットボトルを使った捕獲器の作り方が紹介されているので、それを見て自作することも可能です。
捕獲した虫は実体顕微鏡で観察して、クロバネキノコ類の発生を確認します。定期的に観察することで発生状況をモニタリングできます。
フォース粒剤やスタークル/アルバリン顆粒水溶剤、ベストガード水溶剤などクロバネキノコバエ類に登録のある殺虫剤を使って防除します。今のところ天敵農薬は販売されていませんが、クロバネキノコバエ類に登録のある農薬は増えつつあり、2019年には新たにトマトやミニトマトでベストガード水溶剤が使えるようになりました。
地中に潜む幼虫の駆除には、土壌へ灌注するタイプの薬剤が効果的です。ネギネの場合には土寄せを行うと幼虫の生息場所まで農薬が届かなくなるため、それまでにしっかりと防除を行うことが重要です。
収穫残さには幼虫が寄生している可能性があるため、圃場に放置しないようにしましょう。特に根付いた収穫残さは、ネギネの幼虫を増やし後作にも被害が広がります。土壌消毒剤のキルパーで残さの枯死処理をしたり、残さの腐熟を助ける石灰窒素を散布して耕うんしたりしましょう。
出荷調整の際に出た葉などを圃場に戻さないことも大切です。
農薬による防除や収穫残さの処理を徹底してクロバネキノコバエ類の被害を防ぎましょう。登録農薬は今後も増えていくと予想されます。最新の情報にも気を配っておくと良いですね。
▼参考文献
〇ネギネクロバネキノコバエ防除マニュアル(令和元年10月版),農業技術研究センター,埼玉県公式ホームページ
http://www.pref.saitama.lg.jp/b0909/documents/neginemanual.pdf
〇ネギネクロバネキノコバエ Bradysia odoriphaga 防除のための手引き(技術者向け)-2020年改訂版,農研機構
https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/Bradysia_sp_boujo2020.pdf
〇新害虫ネギネクロバネキノコバエの生態と防除対策について,WEB 版 R1 年5月号のうりんさいたま「テクノスコープ」,埼玉県農業技術研究センター, 埼玉県公式ホームページ
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0909/documents/201905techno1.pdf
〇イチゴ根やクラウン部などを加害するハエ 目の幼虫(チバクロバネキノコバエ)が県内で初めて確認されました,営農ニュース,2014年,2317号,JA全農いばらき
http://www.ib.zennoh.or.jp/contents/make/einou/2317.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。