コラム
公開日:2020.11.25
施設園芸を営む人であれば、CO₂発生装置による施策をご存じの方も多いのではないでしょうか。
国内での普及率はまだあまり高くありませんが、上手に使えば作物の生育や収量を大きく伸ばすことができます。
今回はCO₂発生装置と、その選び方について解説しています。CO₂発生装置の導入を検討している人は必見の内容になっていますので、ぜひお付き合いください。
「作物の生育を良くしたい」「収量を増やしたい」と、農業に携わるすべての人が考えていると思います。
土づくりや農薬の施用などはすぐに思いつくところですが、ハウス栽培に関しては他にも見逃せないポイントがあります。
それは空気です。実はハウス内の空気中からある物質が少なくなると、作物の生育が鈍くなることがわかっています。
その物質とは二酸化炭素(CO₂)です。
二酸化炭素は植物の「光合成」に必要不可欠な物質であり、
ハウス内は二酸化炭素が不足しやすい環境ということがわかっています。
植物は光合成を行う際、空気中の二酸化炭素を取り込み、酸素を吐き出しています。
そのため、ハウス内の空気は徐々に二酸化炭素が減り、特にハウスを締め切ることが多くなる冬場は、その傾向が顕著になります。
その解決策として有効なのが、CO₂発生装置の設置です。CO₂発生器や炭酸ガス発生装置、光合成促進装置と呼ばれることもあります。装置を使ってハウス内のCO₂を増やし、CO₂濃度を適正に保つことで、作物の光合成を促します。
CO₂発生装置を選ぶ際は、ハウスの大きさと作業性について確認しましょう。
まずハウスの大きさについてですが、CO₂発生装置は ハウスの広さに対応しているものを選ぶようにしましょう。 ハウスの広さに対して装置のパワーが不足していると、十分な量の二酸化炭素を送ることができず、思ったような効果を得られません。 二酸化炭素は土壌ではなくハウス内の「空間」に施用するものなので、作付面積ではなく ハウスの「容積」を基準に考えるようにしましょう。
次に作業性についてです。
装置を設置にはどうしてもその分のスペースが必要になってきます。
設置方法によっては二酸化炭素の供給用ダクトが必要になることもあります。
普段の管理作業に必要な作業動線が確保できるか、設置前にしっかり確認するようにしましょう。
中には天吊りタイプの発生装置もありますよ。
また、CO₂発生装置は、 発生させる二酸化炭素が高温になるものが一般的です。 そのため夏場の使用は、作物にかかる熱ストレスを考えると現実的ではありません。発生させた二酸化炭素を冷却し、夏場の使用にも対応した商品もあります。年間を通しての使用を考えている場合は、そうしたモデルも検討してみてください。
作物により多くのに二酸化炭素を届けるには、「局所施用」と呼ばれる方式がおすすめです。
局所施用とはハウス内に二酸化炭素の供給用ダクトを張り巡らし、作物のすぐそばまで直接二酸化炭素を送り込む方式です。
ハウス全体に二酸化炭素を散布する方式に比べて、
作物が二酸化炭素を取り込みやすくなります。
※イメージ図:CO₂貯留・供給装置「agleaf (アグリーフ)」
設置後は、
発生させる二酸化炭素の量にも気を配りましょう。
空気中の二酸化炭素は多ければ多いほど良いというわけではありません。作物の成長率は空気中の二酸化炭素量が1000ppmを超えたあたりから、大きく変化しないことがわかっています。(自然の空気中の二酸化炭素は400ppm程度)装置を余分に稼働させるとその分、余計なコストがかかってしまいます。植物が光合成によって消費した分を補う程度400ppmを目安にすると良いでしょう。濃度施用をする際にはCO₂コントローラーを使うことで、ムダのない施用をすることができます。
CO₂発生装置は作物のポテンシャルを十分に引き出すことができます。ハウスの状態や求める効果をよく考慮し、選んでみてください。
CO₂貯留・供給装置「agleaf (アグリーフ)」/フタバ産業(株)
▼参考文献
〇グリーンレポート№568(2016年10月号),施設園芸における二酸化炭素施用の有効性
https://www.zennoh.or.jp/eigi/research/pdf/gr568.pdf
▼参考サイト
〇栽培の知識,アグリピック
https://agripick.com/2214
ライタープロフィール
【オオタニ コウスケ】
北海道出身。
酪農経営について学んだ後、大手農業機械メーカーにて勤務しました。現在は機械メーカーで培った経験と知識を元にライターとして活動しています。得意分野は酪農、トラクタ、作業機、噴霧器やポンプに関することです。