コラム
公開日:2022.11.15
世界的に問題となっている食品ロス。形や熟度によって出荷ができず廃棄されてしまうイチゴと日々向き合っているイチゴ農家の方にとっては他人事とは言えないのではないでしょうか。 そこで今回は、廃棄予定のイチゴの活用方法を検討している方向けに、冷凍イチゴを使った六次化(6次産業化)のアイデアやメリットをはじめ、取り組むうえで知っておきたい注意点を紹介します。
規格外などの廃棄予定のイチゴは、そのままジャムなどに加工するよりもまずは冷凍保存するのがおすすめです。ここでは、冷凍したイチゴを六次化に活用するメリットを紹介します。
冷凍イチゴの最大のメリットは、使い方次第で様々なアレンジが効くことです。イチゴの6次産業化というとジャムやドライイチゴなどの方法が一般的ですが、一度冷凍イチゴにしておけばそのまま販売することはもちろん、ジャムやスムージー、焼き菓子など色々な商品に加工することができます。 冷凍イチゴをそのまま販売する際には、解凍方法やアレンジレシピ、おすすめの食べ方を紹介してあげることで、消費者の心を掴む(購買意欲を促進する)ことができます。
完熟した状態で冷凍保存できるため、イチゴの持つおいしさや栄養を最大限活かした商品を作ることができます。
農産物としてのイチゴは規格や出荷量などによって価格が左右されますが、冷凍イチゴやそれを活用した加工品にすることで安定した価格で販売することが可能になります。
イチゴの旬は基本的に11月~5月頃と言われています。冷凍保存しておくことで生のイチゴを出荷できない時期の収入源にもなります。
栃木県小山市でイチゴ農家を営む遠井農園は、年間を通しておいしい状態のイチゴを楽しんでもらいたいという思いから、冷凍イチゴの加工・販売を行っています。収獲したイチゴはヘタを取った後、流水で洗い流し次亜塩素酸水で殺菌し、もう一度流水で洗ってから水気を切り急速冷凍させます。冷凍されたイチゴは真空パックにしておくことで鮮度をキープしつつ、オンラインショップなどで販売されています。
静岡県富士宮市でイチゴ農家を営む富丘佐野農園株式会社では、独自の製法で冷凍保存したイチゴを活用した自家製スイーツを開発。イチゴのドリンクをはじめ、冷凍イチゴを細かく削ったシェイブベリーやソフトクリームなど、カフェスペースを併設した直売所やキッチンカーなどで販売しています。
渡辺パイプの実践農場「げんき農場羽生」では、冷凍イチゴを削った人気商品「削りイチゴ」や氷のシャキシャキ食感がたまらないイチゴのスムージーをキッチンカーで販売。フードロスを減らすだけではなく、イチゴの収穫ができない育苗期(7~10月)の収入を確保しています。
冷凍イチゴを活用した六次化に取り組む前に、知っておいていただきたいのが、冷凍方法について気を付ける必要があるということです。通常の冷凍庫では、冷凍に時間がかかることでイチゴの劣化を進めたり栄養価が損なわれる原因にもなるため、必ず急速冷凍が行える業務用の設備を用意しましょう。自分たちで製造から販売まで一貫して行う場合には、衛生面の管理やそのための人材確保も必要になるため、コストや人材確保の面で難しい点が多くあります。その場合は、加工だけでも専門の業者に外部委託することを検討してみましょう。
また、これは冷凍イチゴに限らない話ですが、農産物をスイーツなどの加工品として販売する場合は用途に合わせた設備が必要になるのはもちろんのこと「商品の内容」、「販売場所」、「値段」、「内容量」など、購入者のニーズを想像して商品を企画することが大切です。実際に六次化に成功している農園を見学させてもらったり話を聞いてみることで、新たなアイデアやヒントが見つかるかもしれません。
六次化は、成功すれば廃棄処分の削減や所得向上などさまざまな恩恵を受けることができます。難しいそうだなと感じている方は、まず家族や身内などに自分がやりたい方向性などを話し、仲間を募っていくというところから始めてみてはいかがでしょうか。
▼参考文献
〇遠井農園「フローズンイチゴ」
https://tooi.farm/frozenberry/
〇静岡県「6次産業化取組事例集」
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-110/documents/jireisyuu1-20.pdf
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。