コラム
公開日:2023.09.28
△ナシヒメシンクイ幼虫
植物の中に入り込み、茎、実、芽などを食い荒らすシンクイムシ。ひとたびシンクイムシが発生すると、農産物の出荷量に大きな影響を及ぼします。この記事では、農家を悩ませるシンクイムシの生態や被害の内容、そして駆除対策を4つご紹介します。
シンクイムシとは、野菜や果実の内部を食害する害虫の総称です。野菜を食害するメイガ科のアワノメイガ、ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイムシ)、アズキノメイガ、ハマキガ科のナシヒメシンクイ、シンクイガ科のモモシンクイガなどを総称してシンクイムシ類と呼ばれています。
色は橙赤色や淡褐色、グレーなどさまざまです。シンクイムシ類の多くが幼虫態で越冬し、翌年の4月から6月にかけて孵化、成虫となって葉の裏や実に産卵します。
△アワノメイガの幼虫
△アワノメイガの幼虫
ひとたびシンクイムシが発生すると、被害は深刻です。シンクイムシは、野菜や果樹の茎、実、芽に入り込み、中心部(生長点)を食害します。野菜では主に大根やキャベツ、小松菜などのアブラナ科、果物では梨、桃、スモモやりんごなどへの加害が主です。食害の範囲が広いため、被害にあった作物は売り物になりません。被害の発生を食い止めるために、事前の対策が重要です。
シンクイムシへの対策は、木酢液やとうがらし焼酎液など、農薬を使用しない方法から薬剤に頼る方法までさまざまな方法がありますが、幼虫が農作物の内部に入り込むと、駆除が難しくなります。ここからは、予防も兼ねた効果的な駆除対策を紹介します。
地中の土を表土と入れ替える天地返しは、土中で越冬するシンクイムシの幼虫への対策として効果的です。
農作物への産卵を防ぐため、防虫ネットや果物用の保護袋を利用しましょう。野菜は定植したらすぐにネットを張るなどの工夫が必要です。成虫が侵入しないよう、隙間がないようにネットを張り巡らせます。ハウスなどの施設栽培では、出入り口や排気口に防虫ネットを取り付けると、成虫の侵入を防ぎます。購入した苗に卵が付着している場合があるため、定植前に確認することも重要です。
フェロモン成分を利用してシンクイムシの発生を抑えるフェロモントラップを設置するのも効果的です。フェロモントラップとは、メスの性フェロモンを利用して雄の成虫を誘殺する方法です。専用の容器にフェロモン剤を入れて圃場に設置します。
苗を定植する時や、種を蒔く時、植える穴や株元に粒剤を使用してシンクイムシの被害を防ぐ方法があります。また、育苗の後期から定植前に育苗トレイに粒剤を入れると、2週間から1か月と長い防除効果が持続する粒剤もあります。シンクイムシに効く薬剤として、ダントツ粒剤やオルトラン粒剤が一般的です。
シンクイムシが大量に発生すると、完全に駆除するのは難しいのが実情です。定植や播種の段階から土壌や苗をよく観察し、こまめな対策で被害を乗り切りましょう。
▼参考サイト
〇長野県農業関係試験場
https://www.agries-nagano.jp/pest/159.html
〇東京都病害虫防除所,8月の防除のポイント,令和5年7月28日
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/fc4b52c375cef91e8b41d3875ff74292.pdf
〇茨城県,フェロモントラップの見方
https://www.pref.ibaraki.jp/index.html
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!