コラム
公開日:2026.04.30

△画像提供:日本ワイドクロス様
連日の猛暑、ハウス内の温度計を見てため息をつく―― そんな日が増えていないでしょうか?
大切な作物を守るために欠かせない暑さ対策ですが、いざ資材を選ぼうとすると、その種類の多さに迷ってしまう方も多いはずです。
「とりあえず黒のネットを張っておけば安心!」と考えているなら、少し立ち止まってみてください。実は、遮光資材の「色」や「遮光率」の選択ミスが、かえって作物の徒長や光合成不足を招き、収益を下げてしまうケースが少なくないからです。
本記事では、遮光ネットの「色」による違いと、「遮光率」の考え方を整理し、トマト・イチゴ・きゅうりなど作物別の目安をわかりやすく解説します。

△画像提供:日本ワイドクロス様
まず、遮光ネット選びで最も悩みやすい「色」の選択から整理しましょう。市販されている農業用の遮光ネットや遮光カーテンには、主に3つの色があり、それぞれ光と熱への作用が異なります。
| 色 | 特徴・メリット | デメリット・注意点 | 最適な利用シーン |
|---|---|---|---|
| 黒 | 高い遮光性 光を吸収して物理的に遮断するため、遮光効果が非常に高い。 |
ネット自体が熱を蓄え、ハウスとの距離が近いと輻射熱で内部を温めてしまう。 | とにかく強力に光を遮り、温度を下げたい場合。 |
| 白 | 光合成と温度抑制の両立 太陽光を反射しつつ「散乱光」を届けるため、ハウス内が暗くなりすぎない。 |
黒に比べると、単純な遮光率の数値では劣る場合がある。 | 温度上昇を抑えつつ、作物の生育に必要な光を最大限確保したい場合。 |
| シルバー | 遮熱性能に特化 アルミ蒸着により赤外線を効率よく反射するため、遮熱効果が極めて高い。 |
汚れが付着すると反射効率が落ちるため、定期的なメンテナンスが望ましい。 | 地温の上昇を抑えたい夏場の栽培や、強力な熱対策が必要な場合。 |
光を吸収して物理的に遮断するため、遮光効果自体は非常に高いです。しかし、黒という色の特性上、ネット自体が熱を持ちやすく、ハウスのフィルムとの距離が近いと、輻射熱(ふくしゃねつ)によって内部をかえって温めてしまう欠点があります。
近年、スマート農業の普及とともに注目されているのが白です。太陽光を反射しつつ、ハウス内には「散乱光」として柔らかい光を届けるため、ハウス内が暗くなりすぎません。温度上昇を抑えながら、作物の生育に必要な光を最大限確保したい場合に最適です。
アルミなどを蒸着させたシルバーは、熱の元となる赤外線を効率よく反射するため、遮熱効果に極めて優れています。地温の上昇を抑えたい夏場の栽培において、最も強力な味方となります。


次に、本題である遮光率の数値についてです。数値が高いほど涼しくなりますが、作物にとっては光合成を阻害する「日照不足」を招きます。主要な作物ごとの推奨目安を整理しました。
| 作物名 | 推奨遮光率 | 理由・ポイント |
|---|---|---|
| トマト | 30〜45% | 非常に強い光を好みます。 50%を超えると着色不良や糖度低下を招く恐れがあるため、白やシルバーでの遮熱が有効です。 |
| きゅうり | 35〜50% | 光を好みますが、高温による「曲がり果」や「しなび」を防ぐため、受光量とのバランスが重要です。 |
| ナス | 30〜50% | 直射日光による「つやなし果」を防ぐために使用します。 ただし、遮光しすぎるとナスの特徴である「紫色の着色」が薄くなるため注意が必要です。 |
| イチゴ(育苗) | 50〜75% | 高温による花芽分化の遅れを防ぎ、根の活力を維持するために、果菜類の中でも高めの遮光率が求められます。 |
| レタス・小松菜 | 50〜75% | 高温によるトウ立ちや葉焼け、苦味の発生を防ぐため、しっかりとした日除けが必要です。 |
※あくまで目安であり、地域・品種・栽培時期によって調整が必要です。
どんなに適切な遮光率を選んでも、張り方を間違えると効果は大きく下がります。場合によっては、遮光率以上に結果を左右するポイントです。
よくある失敗は、ハウスの天面にネットを密着させてしまうこと。これでは熱が逃げ場を失い、フィルムとネットの間で高温の空気層ができてしまいます。
・外張り(ハウスの外側)に設置
・被覆資材から最低20cm、できれば30cm以上離す
・3m間隔を目安にマイカ線などで支え、たるみを防ぎながら空気の通り道を確保
この“隙間”によって空気が流れ、温度上昇を大きく抑えることができます。


ネットだけの対応に限界を感じているなら、他のアプローチとの併用を検討しましょう。
最近では、熱線(赤外線)のみをカットし、可視光線を通す機能性フィルムへの張り替えも非常に有効な手段です。光量を確保しながら温度上昇を抑えられます。
フィルムの外側に直接散布する「遮光剤(塗布剤)」も普及しています。ネットを張る手間や強風時のリスクを抑えることができます。遮光剤は、夏が終われば専用の洗浄剤や雨で自然に落ちるタイプもあり、秋口の急な日照不足にも柔軟に対応できる最新の使い方です。
暑さ対策で大事なのは、一つの資材に頼り切るのではなく、お使いのハウスの構造や栽培品目、地域の気象条件に合わせて「遮光」と「換気」をセットでプランニングすることです。
施設園芸における暑さ対策は、もはや「太陽を遮る」だけでは不十分です。作物が健全に育つための光を確保しつつ、いかに熱を外へ逃がすかという「光と風のバランス」が経営の成否を分けます。
まずは、ご自身のハウスの環境を再確認してみてください。
・作物の節間が伸びすぎて(徒長して)いないか?
→白やシルバーへの変更を検討
・ネットの下に熱がこもって、サイドからの風が止まっていないか?
→隙間を開ける張り方へ改善
・遮光率が高すぎて、ハウス内が暗くなりすぎていないか?
→遮光率を下げる、または白系・散乱光タイプへの変更を検討
資材の特性を正しく理解し、適切な資材選びと工夫を行うことで、過酷な夏を乗り越え、実り豊かな秋の収穫を迎えられることを心より応援しております。
▼参考文献
〇静岡県農林技術研究所「施設園芸における高温対策の技術集」,令和6年8月
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/058/706/kouontaisaku.pdf
〇滋賀県農業技術振興センター農業革新支援部「施設果菜類における高温対策の手引き」,令和5年3月
https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_zirei/brand/attach/pdf/201023_3-40.pdf
〇国立大学法人 千葉大学大学院園芸学研究科環境調節工学研究室ほか「施設園芸における高機能性被覆資材の利用技術体系の開発」
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/h27kakushin/chiiki/research/files/subject3_01.pdf
〇一般社団法人 日本施設園芸協会「施設園芸・植物工場ハンドブック」(ISBN:978-4540151019),平成27年5月


ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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