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儲かる農業は“攻めの農業”!念願の法人化を叶え、さらなる収量アップ、販路拡大を目指して<後編>【栽培歴18年】

公開日:2018.12.27

栃木県の足利市で9年も前に高軒高耐久性ハウス(超低コスト耐久性ハウス)を購入し最先端の環境制御に取り組んできた大玉トマトの生産者:堀越さん。50人以上いる部会の相談員も務め、リーダーシップを発揮されている。最近では念願であった法人化を叶え、今後一層の活躍が期待される栽培歴18年のベテラン農家。
その取り組みについてインタビューしました。


▼(前編)記事はこちら

現在はどのような環境制御をされていますか?

統合環境制御盤を使った環境制御を行っています。高軒高耐久性ハウスは統合環境制御システム「マキシマイザー」を使っていますよ。
マキシマイザーは、9年前の補助事業で高軒高耐久性ハウスを購入した際に同時に購入しました。当時はまだ日本版のマキシマイザーは片手ほどしか納入者がおらず使い方もよく分からない状況でしたが、私を含めた若手農家5人全員で一念発起して購入を決めました。
使い始めて9年が経ちますが、未だに機能を使いきれていません。それくらい沢山の機能があって、やろうと思えば何でも出来ます。それでもマキシマイザーの中では1番下のスペック。もっと上のスペックになると、指紋認証で労務管理までやってくれるとか。もはや大規模な会社のようです。
高軒高耐久性ハウスとマキシマイザーの組み合わせはとても“攻められます”よ。あらゆる環境を細かく設定できるので、色々な挑戦ができます。そして、その中からいい方法を導き出して他の圃場(ビニールハウス)に展開しています。あの時思い切って購入して良かったです。何事もそのときの勢いで入れていかないと、攻めないと儲からない。まさに攻めの農業です。


株式会社誠和 統合環境制御システム「マキシマイザー」

【重要】マキシマイザーについて
マキシマイザーは世界的に有名な制御機器メーカー、プリバ社の製品です。今後はより新しい環境制御のためマキシマイザーは廃盤となり、後継機種にバトンタッチします。後継機種に関しましては、株式会社誠和より皆様へご案内を予定しておりますので、今しばらくお待ちください。


▲高軒高耐久性ハウス

販路はどのようにしていますか?

現在は農協への出荷と、自動販売機での販売をしています。
昔は物を買ってもらえるのが当たり前の時代でした。でも今は作っても売れない時代。作り手がメインだったのが、買い手がメインになって「消費者が買いたい物を選んで買う」時代になった。作れば売れるという時代は終わってしまったのです。だから“いいもの”を作らないと売れない。“いいもの”を作るには設備や肥料などコストがかかる。言い方を変えれば、コストをかけないと”いいもの”が作れない。ハイリスク、ローリターンになってしまった。世間では「野菜の値段が高い」と言われます。しかし我々農家にとっては決して高い値段ではないのです。栽培にコストをかけているのでどうしても売値が上がってしまう。


▲自動販売機(イメージ写真)

最近は法人化したこともあり、新たな“儲かる仕組み作り”を考えています。いま1番興味があるのはネット販売です。今までの販売ルートではやはり市場の値段が決まっているので、自分で値段を決める事ができません。世の中、物があふれると価格競争になってしまう。でもコストは下げられないのが現実です。

最近、生産者と消費者のための面白いアプリを知りました。生産者が売りたい物を言い値で出品して、消費者がそれを購入する。消費者は購入後に写真やコメントをアップできるSNSのような機能もある。野菜だけではなく、米や肉、卵やはちみつ、地ビールなど様々な食材が出品されています。
口コミがもらえるのは農家にとってとても嬉しいことです。

おいしいトマトの見分け方を教えてください。

トマトを買うときに新鮮さを見るには、トマトのヘタの部分を見ます。葉がピーンと立っているのが新鮮な証です。あとはヘタの部分の臭いをかぐことです。新鮮なものは青臭いです。
収穫したトマトは、置いておくと酸味がなくなってどんどん甘くなっていきます。最近は甘い=美味しいとの風潮があります。糖度は数値化できるので、わかりやすいですしね。でも、糖度もあって酸味もある、このバランスが取れたものが本当に「美味しいトマトの味」なのだと思います。

トマトの色は時期によって変わります。冬のトマトは切ったときに中身も赤い。でも5月とか夏のトマトは表面だけ赤くて中身は青いです。あと、切ったときに中のゼリーが落っこちてしまうのは古い証拠!時間が経っています。トマト嫌いな子供たちはこのゼリーが嫌いだと言うのですが、新鮮なトマトはこのゼリーがこぼれず包丁にくっついてくるんですよ。だからきっとトマト嫌いな子たちは「本当に美味しい新鮮なトマト」を食べれば絶対好きになるはず!
実は包丁も入れないほうが美味しいんですけどね。旨味成分が出ていってしまうので、なんだかんだまるかじりが1番美味しいです。


▲「ヘタの部分の臭いをかいでみる・・・」
編集部も収穫したばかりのトマトを丸かじりで頂きました。美味しい!

どんな品種を栽培しているのですか?

品種は部会で統一しています。今栽培しているのは麗容(れいよう)という品種。もう15年ほど栽培しているので、そろそろ変えようかと色々な品種を試しているところです。今うちにも試作の品種があります。私が所属する足利部会は50人ほど。なのでみんなで少しづつ違う品種をハウスの一部で栽培して、様子を見て情報交換をしています。この地域はみんなオープンなのでよく情報の共有をしていますよ。

今後の目標があれば教えてください。

収量の目標でいうと10aあたり35トンにすることです。
収量が上がったら労働力も増えて大変だってイメージがありますけど、仕事の役割分担ができるので、逆にラクになるのでは?と思います。従業員も増やしたいですね。
儲かるためには挑戦が必要です。まだまだこれからも攻めの農業でいきますよ!


ハウスの情報


ハウス:鉄骨ハウス7連棟
【その他2ヶ所(ガラスハウス、高軒高耐久性ハウス)】
ハウス総面積:73a
暖房機2台
ヒートポンプ4台
炭酸ガス発生器3台(灯油1台、ガス2台)
統合環境制御盤1台
かん水(自動とタイマーの使い分け)


ハウスの様子



キュレータープロフィール

栃木県/トマト生産者 
堀越さん

現場監督から農家に転身して18年。
9年も前から高軒高耐久性ハウスを購入し最先端の環境制御に取り組まれてきた。50人以上いる部会の相談員を務め、若手の育成に携わるなどリーダーシップを発揮されている。「攻めの農業」に徹し、とても勢いがある一方、「仕事は楽しく!」がモットーでとても気さくだ。インターネットを使った情報収集が得意で様々な最新情報をもっている。若い人がついていきたくなるのも納得の人柄。目標であった法人化を叶え、今後一層の活躍が期待されるベテラン農家。 取材担当者より

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