コラム
公開日:2020.03.10
「有機栽培した野菜を高値で売りたい」、「安心安全な野菜を消費者に届けたい」、「環境にやさしい農業を実践したい」、など有機栽培に興味のある農家の方は多いのではないでしょうか。
ですが、有機栽培って何?といざ聞かれると戸惑ってしまいますよね。化学肥料や農薬を使わずに栽培すること?それとも・・・?有機栽培について何となくのイメージがあっても正確に答えることは難しいものです。
そこでここからは、有機栽培とは何か?よく耳にする無農薬栽培とは何が違うのか?どんなメリットがあるのか?について紹介していきます。
有機栽培とは「有機農業」ともいわれ、日本では有機農業推進法によって「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法と用いて行われる農業をいう。」と定義されています。
つまり、
①化学肥料や化学農薬を使わない(使える農薬もあります)
②遺伝子組み換え技術を使わない
③農業生産による環境に与えるマイナスの影響をできる限り減らす
という3点の方法を満たした農業が有機栽培です。
ちなみにこの定義に沿って農業を行っても農産物に「有機」の表示をして販売することはできません。農産物に「有機」や「オーガニック」と表示するには「有機農産物の日本農林規格(JAS規格)」の基準に適合した栽培を行っていると第三者機関に認証される必要があるので気を付けましょう。
また、有機栽培と似た言葉に無農薬栽培という言葉がありますが、現在は農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で使用が禁止されています。
なぜかというと、例えば近隣圃場から農薬が飛来したり用水に農薬が含まれていたりする可能性を完全に否定することは難しいためです。自然栽培や天然栽培といった紛らわしい言葉を使うこともガイドライン違反になります。
有機栽培には3つのメリットがあります。
①農産物の信頼性の獲得
農産物に有機と表示して販売するには有機JAS認証を受ける必要がありますが、認証には非常に高いレベルが求められます。認証を受けた農産物は取引先や消費者の高い信頼を得ることができます。
②付加価値の創出
他の農産物との差別化ができます。有機農産物を購入したいという消費者に対して普通の農産物より高い価格で農産物を販売することが可能です。
③全国的な取引に特に強い
有機JAS規格は日本全国一律の規格で認知度も高いため取引先への説明が簡単です。規格の説明に労力を割くことなく、全国どこでも販路を開拓しやすいといえます。
有機栽培の定義はシンプルで誰でも取組むことができます。有機農産物を販売する際には表示文句に気を付けましょう。有機JAS認証を受けるなどして差別化を図ると高い付加価値の創出も夢ではありませんよ。
▼参考サイト
〇【有機農業関連情報】トップ~有機農業とは~、農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/
〇特別栽培農産物に係る表示のガイドライン(平成19年3月23日改定)、農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_03.pdf
〇JAS規格の認定取得ガイド、農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/guidejas_nintei.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。