コラム

【洋ラン栽培】約2万5千種類の中からおすすめ品種をご紹介!育て方と注意すべき病気も解説

公開日:2024.01.30

華やかなイメージのある洋ランは、お祝いやプレゼントとして人気のある花のひとつです。本記事では、洋ラン栽培をはじめたいと考えている方向けに、おすすめの品種や育て方のポイントを紹介します。洋ラン栽培を行う上で気を付けたい病害虫についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

1.2万5千種類!?お祝いの花「洋ラン」の基礎情報

洋ランは、日本原産のものを除いたランの総称です。高級感のある見た目から、お祝い事に贈る花として選ばれています。原産地は、メキシコ・グアテマラなどの中南米や、インド・タイなどの東南アジアとされ、種類は約25,000種あると言われています。基本的に、おしべとめしべがひとつになっている「ずい柱」と呼ばれる器官を持っていて、花粉は飛散せずに塊状になっているのが特徴です。また、花の形が左右対称で、比較的花の寿命が長いとされています。

2.洋ランの代表的な種類とライターおすすめ品種をご紹介

洋ランの代表的な種類は、カトレア・シンビジウム・オンシジウム・デンドロビウム・胡蝶蘭の5つです。ここでは、それぞれの種類のなかでも人気のある品種や栽培がしやすい品種をピックアップしてご紹介します。

カトレア

カトレアは、メキシコからブラジルに自生する洋ランの一種です。花の色が鮮やかで香りのよい品種が多い傾向にあります。原産地では樹木や岩に着生しているため、乾燥気味の環境を好むのが特徴です。 カトレアでおすすめの品種は「アイリーンフィニー」です。大きく立体感のある花で、香りも楽しめます。花の色や大きさなど、さまざまなタイプのカトレアがありますが、最もスタンダードなカトレアといえるでしょう。




シンビジウム

シンビジウムは、インド北部からミャンマー、タイなど東南アジア一帯に自生する洋ランです。大型種から小型種まで、さまざまな品種が栽培されています。大型種は最低生育温度が10~13℃と耐寒性が弱く、小型種は5~6℃まで耐えられるものもあります。シンビジウムのなかでとくにおすすめの品種は「ラッキーフラワー『あんみつ姫』」です。花の色は淡いピンクで、背が高く花をたくさん咲かせるため、贈答用によく用いられています。




オンシジウム

オンシジウムは、コスタリカやコロンビアに自生しています。黄色くて小さな花をたくさん咲かせるのが特徴ですが、種類によってはピンク色や赤色なども存在します。暑さには弱いため、夏季はなるべく涼しい環境で管理することがポイントです。代表的な品種として、不定期咲きの「アロハイワナガ」や「スイートシュガー」、春と秋の年2回開花する「ゴワーラムゼイ」などがあります。鉢物として栽培したい場合はアロハイワナガ、鉢物と切り花どちらも栽培したい場合はスイートシュガーがおすすめです。




デンドロビウム

デンドロビウムは、東南アジア原産の洋ランです。日本で自生しているセッコクというラン科植物の仲間でもあります。ランのなかでも最も日光を必要とする種類であるため、5~9月以外は遮光をせずに栽培するのが基本です。代表的な品種としては「スノーフレイク」や「ヒノデ」の2つがあります。デンドロビウムは耐寒性が強く丈夫で、洋ランのなかでは栽培が容易とされています。紹介した品種以外でも比較的栽培しやすいものが多いため、はじめて洋ランを栽培する場合はデンドロビウムの品種を選ぶとよいでしょう。




胡蝶蘭(ファレノプシス)

贈り物としても人気のある胡蝶蘭は、主に東南アジアで自生する洋ランの一種です。大きくて白いきれいな花を咲かせるのが特徴で、さまざまなシーンで贈答用として利用されています。開花時期は5~7月と11~12月とされていますが、温度管理によって開花時期をずらすことが可能です。 胡蝶蘭のなかでもとくにおすすめなのが「シグナス」という品種です。胡蝶蘭らしい真っ白な大輪を咲かせます。このほかにも、リップ(唇弁)が赤くなっているものや、黄色いものなどさまざまな色や大きさの品種が存在するため、商品性の高いものを選ぶとよいでしょう。

3.栽培方法と管理のポイント~胡蝶蘭編~

ひと口に洋ランといっても、種類や品種によって栽培方法は異なります。ここでは、洋ランのなかでもとくにポピュラーな存在である胡蝶蘭の栽培方法を見ていきましょう。

フラスコ出し  

洋ランは、実生苗を安定的に作ることが難しいため、フラスコを用いて培養した苗を用いるのが一般的です。そのため、フラスコから苗を出して植え替える作業を行います。苗をフラスコから出す数日前に、75%の遮光環境下に置いて昼夜の温度差に慣れさせましょう。次に、大きくて生育のよい苗を必要なだけ選んでフラスコから出します。播種の際に使用した培地は寒天でできているため、苗を水で洗うのも忘れずに行ってください。






ポット上げ  

フラスコから出した苗を2号ポットに植えていきます。植え込み材料として、酸素供給がしやすく保水性の高いバークやヤシ殻チップなどを使用するのがおすすめです。 植え付け後は75%の遮光環境にし、徐々に通常の管理に移行していきます。新芽が伸びるまでは乾燥しないようにかん水などで湿度管理を行いましょう。薄めに希釈した液肥で適度に追肥も行います。






植え替え  

ポット上げから4~6か月経過したころに3.5号鉢に植え替えを行います。根を発達させたいのであれば、光を強くして乾燥気味の環境で管理するとよいでしょう。短期間で大きい株にしたい場合は、水を切らさないように管理することが大切です。






遮光管理  

最高3万ルクスを限度に、季節に応じて遮光管理を行います。とくに3月以降は日射量の増加に注意してください。






かん水  

ポリポットで管理している場合、夏季は5~7日、冬季は7~10日の間隔でかん水を行います。素焼きの鉢を使用している場合は、これよりも短い間隔でかん水を行うようにしましょう。






施肥  

微量要素を含んだ液肥を月に3回程度与えます。必要に応じて置き肥と併用しても構いません。






温度管理  

夜間は18~20℃になるよう温度管理を行います。育苗初期はやや高めに設定するのがポイントです。 苗が中程度の大きさになったら、花茎が発生しないよう最低温度を25~28℃に保つようにします。高温になると生育障害が起こりやすくなるため、こまめに換気を行いましょう。展開葉が5~6枚になり株が充実したら、開花促進のために18~25℃の低温管理に移行します。






誘引  

花茎の長さが20cm程度になったら、仮支柱を立てて誘引を行います。






出荷調整  

開花がはじまったら、寄せ植えするか単鉢のまま最終誘引を行います。鉢の正面が日光に向くように並べて慣らしたら、出荷調整は完了です。






4.洋ラン栽培で注意すべき【病害虫】とその対策

ここからは、洋ランを栽培する際に気を付けたい病害虫を紹介します。それぞれの対策方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

灰色かび病


花に黒い斑点ができる病気です。多湿になると発生しやすくなるため、風通しのよい環境になるよう換気などを行うようにしましょう。






軟腐病


芽や葉の付近に茶色いシミのような病斑が現れる病気です。放置するとそのまま腐ってしまうため、軽度であれば病気にかかった部分を切り取って消毒を行います。水やりなどでほかの株にもうつる病気なので、病気にかかった株は別の場所で管理することも重要です。






ウイルス病


植え替えに使う道具やアブラムシなどの害虫からうつる病気です。上部の葉が黄色くなったり、葉がモザイク状になっている場合、ウイルス病の可能性が高いといえるでしょう。ウイルス病にかかった株は処分するしかないため、植え替え時などに使用する道具は必ず消毒してから使用してください。






ハダニ


とても小さく、目視ではなかなか見つけることのできない害虫です。ハダニが付いている場合、葉の裏に白い線状のものが現れます。放置すると生育に大きく影響するため、ハダニに効果のある薬剤で防除を行いましょう。






カイガラムシ


カイガラムシに寄生されると、葉の裏に茶色い突起のようなものが付いたり、葉の根元部分の白い粉状のものが現れます。カイガラムシの体は、ロウ状のもので覆われていて薬剤が効きにくいため、歯ブラシなどでカイガラムシを落としてから消毒を行うとよいでしょう。







今回は、洋ランのおすすめ品種や栽培管理のポイントを紹介しました。洋ラン栽培は難易度が高いとも言われますが、初心者の方でも栽培しやすい品種も存在します。本記事で紹介した品種や育て方を参考に、洋ラン栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



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▼参考サイト
〇 千葉県「洋らん」
https://www.pref.chiba.lg.jp/ryuhan/pbmgm/zukan/kaki/yoran.html
〇森田洋らん園「アイリーンフィニー (カトレア)」
https://morita-orchid.com/product/%E3%82%AB%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A2/
〇深大寺オーキット「ランの種類」
https://www.jindaorc.co.jp/type/
〇スズキラン園,デンドロビウムの栽培管理方法
http://orchid.ne.jp/suzuki/pdf/saibai_Dendrobium_nobile.pdf
〇茨城県「花き栽培基準」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/iba02-21.pdf
〇松村洋蘭「【コラム】病害虫について」
https://m-youran.com/cultivation4/

ライタープロフィール

かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。 家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。









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