コラム
公開日:2024.02.21
消費量が特に多い野菜として国が定めている「指定野菜」。キャベツ、きゅうりなど14品目に並び、2026年にはブロッコリーが追加されます。和食、洋食、中華など、さまざまな料理と相性の良いブロッコリーは、今や家庭料理に欠かせない野菜です。今後も安定して需要が見込まれるブロッコリーのハウス栽培についてまとめました。
ブロッコリーは、アブラナ科に属する緑黄色野菜です。株の中心にできる花蕾を成長させて収穫する頂花蕾型と、枝分かれした脇芽の先端にできた花蕾を収穫する側花蕾型、頂花蕾型でありながら側枝を収穫できる兼用種などがあります。発芽や生育温度は10度から20度と耐寒性、耐暑性に優れていますが、5度以下、または25度以上になると成長が抑制されるため注意が必要です。
栄養価が高いとの認識が広まった1980年代以降、ブロッコリーは一般家庭の食卓でもおなじみの野菜となりました。需要の高まりとともに、さまざまな条件での栽培を可能にする品種が必要となり、育種が進んでいます。現在では早生や中生、晩生など多様な種類のブロッコリーが存在し、地域による気候の差や季節を問わず周年栽培が可能です。
ブロッコリーは、株が一定程度まで成長してから低温に当たることで花芽が分化する緑色植物春化型の野菜です。ブロッコリーの生育に適した栽培方法である秋冬どりは、適切な時期に播種することで冬期出荷が可能になります。気温が低く、収穫時に虫による被害が減少するのもメリットです。
秋冬どり栽培には、収穫時期に適した品種を組み合わせることも重要です。年内の収穫には早生種、中生種は年内から年明けにかけて、年明けの収穫には晩生種を使い分けます。
年内収穫を目指して夏に播種をする際、注意点は育苗、生育時期が高温になることです。25度以上にならないよう、換気に気を配りましょう。苗の徒長を防ぐために育苗日数を短くする、生育期間が長い品種は追肥を工夫するなどの工夫も有効です。
需要に合わせてブロッコリーの周年栽培を目指す場合は、初夏どりを安定させることが成功のカギです。初夏どりは、育苗期、定植期以降の生育が難しい低温期に当たります。花蕾の生育に失敗しないよう、繊細な温度管理が重要です。
初夏どりの播種時期は1月から2月です。均一に発芽させるためにはハウス内での温床栽培が欠かせません。地温を20度前後に保ち、水切れを起こさないよう水やりに気をつけましょう。また、花蕾ができる時期には低温や肥料の過不足による生理障害が発生しないよう、十分な管理が必要になります。ブロッコリー株が十分に生育しないまま低温を感知し、花蕾が大きく育たない「ボトニング(早期出蕾)」は、よくある低温障害の1つです。育苗中の低温に注意し、ベタがけ資材などを利用して保温に努めましょう。
花蕾の中に小さな葉っぱが混ざる「リーフィー(挿し葉)」も、温度管理の影響による生理障害です。花蕾を形成する時期にしっかりと低温環境を保ち、花芽ができる時期は高温にあてないなどの工夫をします。耐暑、耐寒性に優れた品種や、低温に鈍感な品種を選ぶのも対応策の1つです。
季節を問わず需要が望める人気野菜、ブロッコリー。指定野菜への追加に伴い、安定供給に向けた農家への支援も期待できます。気温の変化に敏感な性質は、ビニールハウス栽培によって補うことが可能です。ブロッコリーの周年栽培にぜひ挑戦してみてください。
▼参考サイト
〇タキイ種苗
https://www.takii.co.jp/tsk/hinmoku/abr/p2_bdy.html
〇農林水産省,野菜の指定野菜と指定産地についておしえてください。
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0410/02.html
〇(株)ブロリード,ブロッコリーの栽培
https://brolead.co.jp/cultivation/
〇独立行政法人 農畜産業振興機構,ブロッコリー
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0512_yasai1.html
〇東京都農林水産振興財団,無加温ハウス育苗・トンネル栽培による初夏どりブロッコリー
https://www.tokyo-aff.or.jp/uploaded/attachment/6618.pdf
〇農林水産省,みやぎの野菜指導指針,第13節 ブロッコリー
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/miyagi_yasai18_16.pdf
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!