コラム
公開日:2020.05.27
青枯病は名前の通り、植物が青いまま萎れてしまう病気です。トマトやナス、ジャガイモなどナス科野菜の病気としてよく知られていますがイチゴやショウガなど様々な野菜で発生します。
病気の進行スピードが早いため、葉が黄化する間もなく青いまま萎れてしまい、被害株が次々に増えていきます。今のところ治療効果のある農薬は無く、一度青枯病が発生した圃場では“発生を繰り返しやすくなる”という厄介な病気です。そのため、発生させないことが何より重要です。
そこでここからは、青枯病の症状や発生原因、被害を拡大させないために必要な対策についてお伝えしていきます。
高温多湿で発生しやすく、茎葉が天気の良い日の日中に一斉に萎れて、夜になると元に戻るという状態が数日続きます。その後すぐに葉が青いまま萎れ続け、そのまま枯死。発病株が次々に増えていきます。
青枯病の発病株は、切った茎を水中に入れると白濁した細菌液が出てくるため、現地での診断が可能です。
青枯病は細菌が原因の典型的な土壌伝染性の病気です。根など前作の被害作物残さ中で数年生存して、次作の感染源となります。宿主植物が植えられると根の傷口から感染し、導管で増殖して植物を萎凋させます。
潅水など水の移動と共に伝搬するため、水耕栽培では被害が広がりやすくなります。また、芽かきや収穫など、発病株に続いて健全株の作業を行うことでも感染が広がります。
今のところ、治療効果の期待できる農薬はないため予防に努めましょう。以下8つの対策法をご紹介します。
青枯病の常発は避け、無病地で栽培するようにしましょう。連作を避けることも重要です。
排水が悪いと被害が拡大しやすいため、排水の改善を図ります。必要に応じて高畝栽培や堆肥による土壌改良、暗きょを設けるなどの改良を行いましょう。
前作で発病が認められている圃場では、栽培前に太陽熱による土壌消毒や土壌くん煙剤などの農薬による土壌消毒を行いましょう。前作の残さは、すき込まずに圃場外へ持ち出し、処分することも大切です。
気温・地温が高いと発病が多くなります。換気に努め、寒冷紗やマルチでハウス内の気温や地温の低下を図りましょう。
青枯病に耐性のある抵抗性品種や、抵抗性品種を台木に用いた接ぎ木苗を利用すると被害が抑えられます。特に、接ぎ位置の高い高接ぎ苗は高い発病抑制効果を期待できます。
根が傷むと病気が発生しやすいので根を食べるセンチュウや害虫は農薬などで防除することが重要です。
芽かきや収穫などの際には、発病株に触れた手や道具で健全株に触らないように注意しましょう。作業後は手を石鹸でよく洗い、道具は煮沸消毒するなどして管理作業での伝染防止に努めます。
発病株は見つけ次第すぐに引き抜き処分します。特に水の流れに乗って病原菌が伝播しやすい水耕栽培では早期に対処することが肝心です。
青枯病は進行速度が速く、放置すると圃場全体に広がり全滅しかねません。治療効果の望める農薬は無いので予防が重要です。複数の対策を組み合わせ、病気の発生と被害の拡大を防ぎましょう。
▼参考サイト
〇青枯病,種苗事業部,病害データベース,株式会社武蔵野種苗園
http://www.musaseed.co.jp/disease/青枯病/
〇トマト青枯病,あいち病害虫情報,愛知県
https://www.pref.aichi.jp/byogaichu/seitaitoboujyo/3-tomato/tomato-aokgare.html
〇高接ぎハイレッグ苗,各種苗紹介,生産者の皆さま,ベルグアース株式会社
http://www.bergearth.co.jp/manufacturer/product/seedling02.html
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。