コラム
公開日:2021.02.05
イチゴ栽培での一番の問題は、病気やウイルスが発生することです。炭疽病などの病気により、イチゴの収穫量が半分になってしまうということも起こりえます。害虫などが媒介し病気になることが多いのですが、中には遺伝的に病気にかかっている苗も存在します。
これはイチゴの苗が、親株と呼ばれる1つの苗から10~20程度の苗を採取する方法で増やされるためです。つまり、病気の苗を増やさないためには、親株が病気にかかっていないかどうかが重要になってきます。
しかし、プロの農家さんでも外見だけで完璧に判断することは困難です。
そこで今回は、病気を持たないウイルスフリーのメリクロン苗とそのメリット・デメリットについてわかりやすく紹介していきます。
ウイルスフリーのメリクロン苗は、茎頂培養(けいちょうばいよう)で作られます。この培養方法は、茎頂部を分離し無菌的に培養、増殖させる作り方のことです。 また、メリクロン苗は病気を持たず、安定した性質を持った苗を大量に生産することが可能です。そのためイチゴの他にも、サツマイモや洋蘭の苗などで幅広く利用されています。
イチゴの場合は定植苗としてではなく、親株として利用しそこから苗を増やしていくのが一般的です。メリクロン苗を扱う種苗会社はいくつかあり、その地域にあった品種のイチゴ苗を作っています。
ここからは、メリクロン苗のメリットとデメリットをみていきます。
イチゴ栽培でメリクロン苗を使う最大のメリットは伝染病を予防できることです。
炭疽病や萎黄病など、育苗時にランナーを介して伝染する病気のリスクを抑えることができます。イチゴ栽培では、圃場内での病気発生が収穫量をさげる一番の要因です。
発病リスクを最小限に抑えるためには、日々の防除だけでなく最初から病気を持っていない苗を使うということが重要です。
デメリットとしては、①苗の値段が高い、②発注には早期の予約が必要ということが挙げられます。メリクロン苗の値段は、品種や株数などによって異なりますが、500円~と通常の苗に比べると高額です。また、納期に関しては、1~2年程かかることが多く、必要株数を計画的に発注しなければいけません。メリクロン苗の使用を検討する際は、親株更新頻度や必要本数について、早い時期から予算にあった計画を立てていきましょう。
シーズンを通して、たくさんのイチゴを収穫するためには病気を出さないことがなによりも重要です。そのためには、育苗段階で病気を発生させないことが欠かせません。メリクロン苗を使って、病気を防ぎ安定的な圃場経営を目指しましょう。
▼参考サイト
〇農業技術事典 メリクロン苗,農研機構
http://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#koumoku=15168
ライタープロフィール
【畠中駿輔(ハタナカシュンスケ)】
慶應義塾大学卒。28才。
学生時代に東アフリカ6000kmを自転車で縦断。田舎の農村で見た人々の笑顔が忘れられず、銀行員を経て農業の世界へ。2019年日本の農業技術で世界の人々を豊かにするべくタイ北部に移住。
25aの圃場を立ち上げ、現地の方と共にイチゴの高設栽培をしている。