コラム
公開日:2018.10.05
最近では田舎への移住や農的暮らしなどがテレビでよく取り上げられるようになり、ライフスタイルの一環として農業という仕事を選択する人も増えてきました。新規就農者のブログなどを通して理想の農家スタイルに想いを馳せている人も大勢いることでしょう。しかしながら実際に新規就農となると、農業・経営技術や資金面など難しい面があるのも事実です。
農地取得費など高額な初期費用は就農の大きな壁の1つです。また農業経験が乏しい経営初期は、天候に左右されながら商品価値のある野菜を生産し、経営者として利益を出すことは容易なことではありません。「新規就農の資金に1000万円は必要」と耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
個人の力だけで就農することは困難を伴いますが、本気で就農を考える人には国や都道府県、地方自治体による様々な支援制度が用意されています。
まずは新規就農に関する相談窓口や研修機関など、最低限押さえておきたい情報を紹介していきます。
就農から経営確立までの国の支援策が一目でわかる農林水産省提供の必読書です。
内容は「情報収集」「技術・経営力の取得」「所得の確保」「機械・施設等の導入」の4つに大別・色分けされており、必要な情報が探しやすくなっています。就農後も経営が軌道に乗るまではいつでも読めるように、手元に置いておくことをおススメします。
新規就農全般の相談窓口です。
「そもそも農業とは?」という疑問から「農業を始めるにあたって何をすればよいか?」「農業体験をするには?」「農業法人へ就職するにはどうしたらよいか?」など、農業に関する様々な疑問を解決する情報発信をしており、個別相談にも応じてもらえます。
国と農家を繋ぐ役割を持つ全国農業会議所内に設置されており、各都道府県新規就農相談センターとも連携をとりながら相談に乗ってもらえる新規就農者の心強い相談役です。
農業の技術だけでなく経営についても学べる研修教育機関で、全国の42道府県に設置されています。
標準的な履修期間は2年間です。「講義」「実習」「実験」を通して、稲・畑作物・野菜・果樹・花き・ 酪農・肉牛・養豚・養鶏など分野に応じた専門課程を選択して学ぶことができます。
つづいて、給付金制度を紹介します。
新規就農時の所得をサポートする補助金で「準備型」と「経営開始型」の2種類があります。
●「準備型」
就農前に年間で150万円を最長2年間受け取ることができます。
●「経営開始型」
就農後に最大で年間150万円を最長5年間受け取ることができます。
準備型を受け取った後に経営開始型を受け取ることも可能ですし、夫婦で新規就農する場合には2人で1.5人分を受け取ることもできます。受給にあたっては原則45歳以下であることや、準備型では研修を受けた後1年以内に就農すること、経営開始型では農業経営の目標などを記した青年等就農計画の認定を受けた認定新規就農者であることなど様々な条件を満たす必要があります。
活用される際には必ず詳細を確認してくださいね。
認定新規就農者を対象に、農業経営を開始するための機械や施設の購入等に必要な資金を無利子で借りることのできる制度です。株式会社日本政策金融金庫が取り扱っている制度で、返済期間は12年以内で融資限度額は3700万円です。
農地の取得費用は対象外ですが、農地取得に利用できる資金を有利子で借りることのできる制度「経営育成強化資金」もあるので、農地取得にはそちらも参考にしてくださいね。
起業と同じで安易な就農は失敗に直結しかねませんので、入念な準備が欠かせません。農業は国の根幹を成すものなので、就農のための支援制度は手厚く、補助金も多くの種類が用意されています。使えるものは上手く利用して、各人の思い描く素敵な農業ライフをスタートさせましょう。
※記事内容は2018年10月現在の情報です。
【参考文献】
農業を始めたい皆さんを応援します! 農林水産省 経営局就農・女性課 企画グループ.
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。