コラム
公開日:2020.03.25
近年AIやロボットによる作業の自動化をはじめ、IT技術を活用したスマート農業に注目が集まっています。少し前までは研究の段階にあったテクノロジーも、現在では現場への導入が進んでいます。
今回はそうした技術のなかでも「IoT」の分野にフォーカスして、そのメリットや導入事例についてご紹介していきます。
「水やり10年」という言葉が示す通り、農業はそのノウハウが経験則に基づいているのが現状です。また、気候や風土に作物の生育が影響される面が多く、ノウハウそのものの地域差が大きいのも特徴です。
こうした「経験」や「勘」に頼る農業では、「名人」と呼ばれるような人達の技術を身に付けるのは簡単なことではありませんでした。また近年の気候変動をはじめとする、自然環境のイレギュラーも悩みの種のひとつです。
そこで注目を集めているのが「IoT」という技術です。「IoT」とは「Internet of things」の略で、直訳すると「モノのインターネット」という意味があります。 これはコンピューターや通信機器以外のモノがインターネットに接続する仕組みのことで、それを農業に応用したのが「農業IoT」と呼ばれています。
農業にIoT技術を応用することで、膨大な量の情報を自動的に収集・蓄積・分析を行えるようになります。とても多くのメリットが得られるのですが、ここではその中でも特に重要な3つのメリットについて説明していきます。
IoT技術の活用により、天気や気温、湿度などはもちろん、日照時間・土壌pH・降水量など、ありとあらゆる情報を手に入れることができるようになります。
そのデータを分析することで、望む結果を得るにはどのような行動が必要なのか、より論理的に導き出すことが可能になりました。これにより意思決定のスピードと質が大きく向上することになります。
日々の管理作業は農作業において重要なポイントですが、同時にとても手間のかかる作業でもありました。広い農場を歩いて回り手作業で作物の世話をする、そうした手間のかかる作業はIoT技術で激減します。
温度や湿度などの情報を収集するセンサーを設置すれば、手元のデバイスで圃場内の様子を観察できますし、適切なプログラムを設定しておけば散水や換気を自動で行うといったことも可能です。 労働力不足が叫ばれる現代農業において、テクノロジーの活用はそうした課題の突破口にもなり得るのです。
「口に入るものは安全で安心できるものを選びたい」というのが消費者のニーズです。その風潮は年々強くなってきています。
IoT技術の活用で、作物の生育に関する膨大な量の情報を正確に蓄積することが可能になりました。これらの情報をオープンにすることで、「安全・安心」という付加価値を提供できるようになります。
ここからはIoT技術の導入事例をご紹介します。
自動車部品などを取り扱うBOSCH(ボッシュ)が提供するのがハウス内環境モニタリングシステム「Plantect(プランテクト)」です。
プランテクトは、ハウス内の温度・湿度・Co2濃度・日射量などを常時計測し、スマートフォンなどの通信デバイスで一元的に確認することができます。また、そうして集めた情報をもとに様々な病害を予測、ユーザーにそのリスクを知らせてくれます。
見回りや作業の省力化はもちろん、若手農家の生産技術の向上にも一役買ってくれるのではと期待を集めています。
内閣府が進める「次世代農林水産業創造技術」のひとつとして、農研機構が運営するのが「農業データ連携基盤 WAGRI(ワグリ)」です。
ワグリは生育データや気象データなど、様々な情報をクラウド上に集約・統合することを目的としています。こうしたデータはこれまで個々に存在していて連携性がなく、活用し切れていないことが課題となっていました。
それらのデータを統合するプラットフォームを整備することで、より高い次元で生産性の向上、経営改善に取り組めるのが最大のメリットになっています。2019年4月より本格的な運用を開始させました。
IoT技術の農業への活用は進んでおり、今後もその流れは加速していきます。今や農業において必要不可欠な技術となってきているのです。
特に農業界に進出しているベンチャー企業の多くはIoT技術を取り入れ、農業の効率化を目指しています。農業経営の改善、ひいては農業界の発展のためにも追い続けるスタンスが必要と言えそうですね。
▼参考サイト
〇そもそもスマート農業とは? ICTを活用した農業のメリットと導入へ向けた課題,スマート農業,SMART AGRI
「https://smartagri-jp.com/smartagri/20」
〇農業分野におけるIoT事例4選を紹介!スマート農業が課題を解決する?,IoT,技術トレンド,本気留学ならサウスピーク
「https://souspeak.com/ks/iot-agriculture/」
〇IoTで農業の大変革が起きる? 「アグリカルチャー4.0」とは,農業ニュース,マイナビ農業
「https://agri.mynavi.jp/2018_10_05_42544/」
〇IoTとは何か? 活用事例を交えて意味や仕組みをわかりやすく簡単に解説!,デジタルトランスフォーメーション,Monstar Lab
「https://monstar-lab.com/dp/blog/about-iot/」
▼参考文献
〇農業データ連携基盤の構築について,農林水産技術会議
「https://www.affrc.maff.go.jp/docs/smart_agri_pro/attach/pdf/smart_agri_pro-15.pdf」
ライタープロフィール
【オオタニ コウスケ】
北海道出身。
酪農経営について学んだ後、大手農業機械メーカーにて勤務しました。現在は機械メーカーで培った経験と知識を元にライターとして活動しています。得意分野は酪農、トラクタ、作業機、噴霧器やポンプに関することです。