コラム
公開日:2022.03.18
「以前より農家レストランが開業しやすくなった」という話を耳にしたことはありませんか?2020年に関連法令が一部改正されたことにより、農業以外での利用が原則認められてこなかった農地(農用地区域)への農家レストラン設置が全国で可能になりました。今回は、農家レストランの開業方法や活用できる補助金・支援制度などについて解説します。
農家レストランとは、農家が自ら生産した農作物や、地域の食材を使った料理を提供する事業のことです。昔ながらの郷土料理が食べられる食堂、蕎麦屋、おしゃれなカフェなど、お店のスタイルはさまざま。自分でつくった米・野菜・果物などを活用して収益アップが図れるのはもちろん、地域や農園の魅力をアピールすることもできます。
農家レストラン「菜七色(なないろ)」が人気のさいたま榎本農園(株式会社エノファ/埼玉県)のように、野菜の生産と農家レストランの運営にくわえ、観光農園、農業体験、農作物の加工・販売などを一貫して手がける農家も増加中。地域活性化の大きな役割を担っています。
△提供:榎本農園様
△青柳石和イチゴ館直営カフェ
農家レストランを開業するときは、あらかじめ綿密な事業計画を練っておくことが大切です。企画にあたっては、主に次のような内容について検討しておきましょう。
計画が固まったら、営業や施設設置に関わる各種申請・許認可の手続き、「食品衛生責任者」をはじめとする資格の取得、メニューの研究、施設の整備などに着手します。業態や自治体によって必要な手続きが異なりますので、関係各所に相談をしながら進めていきましょう。オープン前にイベントなどに出店し、お客さんの反応を探っておくことも重要です。
ここからは、農家レストランに関わる国の補助金や支援制度の一部をご紹介します。それぞれ対象や適用条件が異なりますので、利用の際は担当窓口にご相談ください。都道府県または市町村独自の支援プロジェクトやファンド事業が運用されている場合もありますので、あわせて確認しておきましょう。
農家が組織する団体等が対象となる交付金です。地域間交流の拠点として、農家レストラン等の整備にかかる費用の一部について助成を受けることができます。
ソフト事業では、インバウンドを中心とする観光客向けの新メニュー開発費等に助成を受けることが可能です。ハード事業では、「六次産業化・地産地消法」に基づく総合化事業計画の認定を受けた団体等を対象に、地域食材提供のために必要な機械・建物等の整備費用の一部が補助されます。
6次産業化に取り組む農家のための相談窓口です。支援を申請して対象者に認定されると、東京の6次産業化中央サポートセンターや、各道府県の6次産業化サポートセンターを通じて専門家のアドバイスを受けることができます。
農家レストランの開業には多くの業務が必要になりますが、採れたての新鮮食材を味わってもらえる喜びは格別です。以前より開業しやすくなった今こそ、多様な支援制度を有効活用して夢を実現させましょう!
▼参考サイト
○地域農畜産物利用促進事業(農家レストランの農用地区域内設置の容認)の全国展開について(内閣府 国家戦略特区)
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/r020331_nouka.html
○農家レストラン開設・運営に関する留意点(新潟県)
https://www.pref.niigata.lg.jp/site/nogyo-navi/6jika-farmer-restaurant.html
▼参考文献
○6次産業化の取組を検討している皆様へ(農林水産省食料産業局産業連携課)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/attach/pdf/6jika-67.pdf
ライタープロフィール
【にっく】
農業研究所の研究員として日本全国を飛び回ったり、アフリカ・東南アジアで農業技術普及プロジェクトに携わったり…国内外の農業に関わってきた経験を持つ農学博士です。圃場作業で汗を流すのが大好き。これまでの経験と知識を生かして、わかりやすい記事をお届けします!