コラム
公開日:2019.01.31
アスパラガスは見た目の良さや独特の歯触りと香りなどから人気があり、ソテーやサラダにぴったりの野菜です。野菜には珍しく多年草で収穫までに3年程かかりますが、一度植え付けると10年ほどは収穫することができます。
栽培自体はそう難しくなくプランターでも栽培できますが、収穫まで長くかかるためか家庭菜園ではあまり見かけません。自家消費用に野菜を作っている農家さんでもトマトやキュウリに比べると栽培している人は少数です。主要産地でもない限りいざアスパラガスを栽培してみようと思っても栽培経験が少なくピンと来ないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回はアスパラガス栽培の基礎について肥料の与え方や株分けのコツをお伝えしていきます。
栽培暦(関東標準)
暖地における種まきの適期は2~3月、植え付けは4月~5月、収穫は4月~5月となっています。
●土づくりから定植
日当たりが良く他の野菜の邪魔にならない場所を選び、定植2週間前までに苦土石灰を150g/m2撒き、土を耕します。1週間前までに元肥として堆肥を3kg/m2、化成肥料(N:P:K=8:8:8)を150g/m2を撒き、土を耕します。畝幅90cm、高さ20cmの高畝を作り、株間30~50cmで苗を定植したら水をやります。苗は種から栽培しても良いですし市販の苗を購入しても良いです。通常は定植から収穫まで2, 3年かかりますが1年目から収穫できる大苗も販売されています。大苗の場合は12月~1月頃に植え付けるようにします。
●栽培管理
追肥として定植1ヵ月後から1ヵ月に1回、化成肥料を30g/m2与えます。定植1年目は株を充実させるために収穫は行いません。倒状防止のため畝の周囲に支柱を立ててひもやネットを張り、雑草防除と必要に応じた水やりを行います。
冬になり茎葉が枯れてきたら地際から刈り取ります。春になり新しい茎が出てきたら畝全面に化成肥料を150g/m2撒きます。茎が25~30cm程の長さになったらハサミで切り取り収穫します。収穫は6月までとし、その後は株の養生に努め翌年の収穫に備えます。そしてまた冬を迎え、茎葉を刈取る、といった一連の作業を繰り返します。
栽培には技術と経験を要しますが、最近ではハウス内に遮光フィルムで覆った小さなハウスを作って栽培する簡単な方法も登場しています。また10cm程の長さの細い茎を収穫したものがミニアスパラガスとして流通しています。ムラサキアスパラガスは品種が異なり表皮にアントシアニン系の色素を多く含みます。
●株分け
10年程栽培すると根が過密状態になり細い茎ばかりが出るようになってきます。こうなったら株分けのタイミングです。株分けによって株を若返らせましょう。3月頃に根株を掘り起し、それぞれに2, 3個の芽が付くように手で2つか3つに分けて植え替えます。
ハウス栽培では雨をよけられるのでアスパラガス栽培において重要な病気である茎枯病の発生を減らすことができます。また保温効果から露地栽培に比べ長期間収穫することが可能です。
栽培管理6m間口の潅水設備を備えたビニールハウスがスタンダードです。定植から1年目の冬の刈取りまでの作業は露地栽培と大きく変わらず株を充実させます。定植後は畝が乾かないように適度に潅水を行い、入口やハウスのサイドを解放しハウス内が35℃を超えないように気を付けます。
2月下旬頃からハウスの入り口とサイドビニールを閉めて保温を行います。天気が良ければ保温開始から3週間程度で収穫ができるようになります。収穫は45日程度にとどめ、その後は茎を伸ばす立茎という作業を行います。追肥は露地栽培と大きく変わりません。茎が伸びきって垂れ下がってきたら130cm程の高さで切り取ります。7月頃から再び収穫期を迎え9月末頃まで収穫することができます。
ハウス内が高温にならないよう側面を解放し、必要に応じて遮光資材などを用いるようにします。
10月頃からは根株を充実させ、露地栽培と同様に茎葉が枯れたら地際から刈り取ります。そしてまた2月下旬頃からハウスの保温、といった一連の作業を繰り返します。
※アスパラガスの花
アスパラガス栽培の収益は、最初は少なく年数が経つにつれ増加していくという特徴があります。本格的に栽培を検討する際には産地ごとの栽培マニュアルを参考にしつつ、他の野菜以上にしっかりと経営計画を立てるようにしてくださいね。
▼参考文献
山口県アスパラガス栽培管理マニュアル、山口県農林総合技術センター、2015.
< http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/4/c/c/4cca54b752db2244ee9cfb2aba10155b.pdf >
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。