コラム
公開日:2024.05.13
果物のなかで最も消費量が多く、スーパーやコンビニでも気軽に手に入れることができるバナナ。そのほとんどが海外からの輸入品ですが、実は日本においてもバナナ栽培に取り組む生産者が増えていることをご存知でしょうか。本記事では、日本でのバナナ栽培の事例や栽培におすすめの品種を紹介します。
バナナといえばフィリピンや台湾が産地というイメージが強く、日本で栽培できるのか?疑問に思う方も多いかもしれません。しかし、近年農業技術が発展したことで、日本でもバナナ栽培の取り組む事例が多く見られるようになってきました。日本の気候では難しいといわれるバナナ栽培ですが、どのような地域でバナナの栽培が行われているのでしょうか。ここからは、日本各地のバナナ栽培に取り組む農園を紹介します。
福島県広野町でまちづくりを行っている企業です。東日本大震災で甚大な被害を受けた農業や観光の復興を目指し、新たな特産品として「綺麗」と名付けた国産バナナの栽培に取り組んでいます。 種子をマイナス60度で凍結させ時間をかけて解凍していく処理方法である「凍結解凍覚醒法」という新技術を応用しているのが特徴で、品種は「グロスミッシェル」を改良して作り出したオリジナル品種を栽培しています。
新潟県柏崎市でバナナ栽培に取り組むシモダファームは、園主の「フィリピンで食べたバナナの味が忘れられない、日本にもこのおいしさを届けたい」という想いから設立されました。シモダファームの母体であるシモダ産業は、廃棄物処理事業を行っており、そこで発生する排熱を活用してビニールハウスの加温を行っています。熱エネルギーを循環させる「サーマルリサイクル」という技術を取り入れることで、雪国である新潟県でのバナナ栽培を可能にしています。
再生可能エネルギー事業を手がける株式会社ユニ・ロットの事業のひとつとして、千葉県木更津市で農業ビジネスに取り組む農園です。同社で収穫された「きみさらずバナナ」は、農薬を使用せずにバナナを栽培しており、皮が非常に薄いため丸ごと食べることができます。2019年の台風ではビニールハウスが倒壊する被害を受けましたが、現在は約200本のバナナを栽培し、年間35,000本以上出荷しています。
栃木県益子町で熱帯果樹の栽培を行っている農業法人です。バナナのほかに、パイナップルやメロンなどの栽培を行っています。食味に優れていると言われるグロスミッシェルという品種を栽培しており、収穫されたバナナは「黄金ときめきバナナ」と名づけられました。栽培期間中の防カビ剤や防虫剤などの農薬が不使用で、皮ごと食べられるバナナを生産しています。
群馬県太田市でバナナ栽培に取り組む農園です。もっちりとした食感が特徴の台湾系の品種グロスミッシェルのほか、モンキーバナナや料理用のバナナなど15種類以上の品種を栽培しています。国産バナナでは樹上で皮が黄色くなるまで待つケースも多くありますが、ほうおうファームでは青いうちに収穫することで味が安定すると考えています。収穫されたバナナは、水耕栽培コンテナを再利用した室に入れ、24~48時かけて追熟させるそうです。
和歌山県海南市でバナナ栽培を行っています。「日本では珍しいとされる作物を育てたい」という思いからバナナ栽培に着手しました。ハウス内は常に28度に保たれており、「凍結解凍覚醒法」を採用しているのが特徴です。また、土には竹炭を使用することで、虫が付きにくくなり農薬を一切使用しないバナナ栽培を実現しています。
愛知県知多半島にある観光農園です。バナナのほかにも、ブラッドオレンジやグレープフルーツなど、さまざまな果樹を栽培しています。品種は、三尺バナナやドワーフキャベンディッシュ、アイスクリームバナナの3種類を栽培しています。オーナー制度を取り入れているため、国産バナナのオーナーになることも可能です。
宮崎県でバナナ栽培を手がける農園です。そもそも宮城県は年間を通して温暖な気候のため、バナナ栽培に適した環境と言えます。宮崎県で初めて「凍結解凍覚醒法」を採用したバナナ栽培を成功させたそうです。IT化することでハウス内の気温や湿度、CO2濃度を厳密に管理し、甘みが強い濃厚な味わいのバナナを生産しています。
鹿児島県南九州市で農薬を使用せずにバナナ栽培を行う農業法人です。盆地特有の気候を利用し、寒暖差がある環境で栽培されています。栽培に使用する水にもこだわっているのが特徴で、名水百選にも選ばれたミネラルたっぷりの水を使用しています。収穫されたバナナは「神バナナ」と名づけられ、オンラインショップなどで販売中です。
バナナは、基本的に温暖な気候で栽培される植物です。適正気温は15~35度とされ、最低でも5度を保つ必要があります。5度以下になると生育障害が発生し、0度以下で枯死することもあります。
そのため、日本のなかでも温暖な気候の沖縄県では露地での栽培が一般的です。また、工夫次第では関東以南であれば露地栽培を行えるとされていて、実際に神奈川県でバナナの露地栽培に成功している人も存在します。
ただし、確実に成功させたいのであれば、ビニールハウスを利用するのが基本です。ハウスを利用すれば、北海道で栽培することもできます。
また、バナナは成長すると大きいものだと4m以上にもなり、通常のビニールハウスよりも高さのあるものを用意する必要があります。栽培方法を工夫し、矮化することでバナナの高さを3mに抑えることに成功している農園もあります。
バナナの栽培に適した環境、土づくりや肥料など詳しい栽培方法については、ぜひ以下の記事をチェックしてみてください。
日本でバナナの栽培を考えるうえで重要なのが、株の背丈と耐寒性です。バナナの種類は生食用と料理用に大別され、世界中に300種類以上あると言われていますが、今回はその中から、 日本のハウス栽培に適した品種を3つピックアップして紹介します。
糖度が高くもっちりとした食感のバナナです。背丈は2mほどと一般的なバナナよりも低く、ビニールハウスでの栽培に適しています。豊産性品種のため、一株で200本ほど収穫できることもあります。
草丈が1.5~1.8mと低く、日本でも屋外での栽培例があるほど耐寒性が強い品種です。また、病気にも強いため育てやすく、食味にも優れています。
2~3mとバナナのなかでは比較的背が低く、耐寒性もある品種です。果実は大きめで、味もおいしいとされています。
日本各地でバナナ栽培に取り組む生産者が増えてきています。とはいえ、まだまだ国産バナナの流通量は少なく、普及している状態とはいえません。日本では珍しい作物を育ててみたいと考えている人にはおすすめの作物といえるでしょう。本記事で紹介した事例や品種を参考にしていただき、バナナ栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
▼参考サイト
〇株式会社広野町振興公社
https://www.hirono-kousha.com/our-business/fruit/
〇シモダファーム
https://shimoda-farm.com/#home-about
〇毎日新聞「千葉・木更津 バナナ農園 甘さと香りがぎっしり 手塩にかけ年間4万本 /東京」
https://mainichi.jp/articles/20230801/ddl/k13/100/018000c
〇木更津ファーム
https://www.kimisarazu.jp/
〇あやね農園
https://ayane877.base.shop/
〇KOKUBO FARM
https://kokubo-farm.com/
〇ちたフルーツビレッジ
https://grapefruit.co.jp/
〇NEXTファーム宮崎
https://next716.com/
〇農業法人神バナナ株式会社
http://kamibanana.co.jp/
〇なんごくの森「バナナ栽培について」
https://www.nangokunomori.com/%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%94%E3%81%8F%E3%81%AE%E6%A3%AE-%E6%9E%9C-%E6%A8%B9/%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%8A/%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%8A%E6%A0%BD%E5%9F%B9%E3%81%82%E3%82%8C%E3%81%93%E3%82%8C/
〇ちたフルーツビレッジ「バナナ苗」
https://chita-banana.jp/nae.html
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。