コラム
公開日:2023.04.12
パーマカルチャーは、人間と自然が共存しながら、持続できる暮らし方を目指す考え方です。パーマカルチャーの概念を生かし、循環する農業を実践する農園も増えています。今回は、パーマカルチャーの意味から、簡単にできる取り組み事例までわかりやすく解説します。
パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)、文化(カルチャー)、農業(アグリカルチャー)という3つの単語を組み合わせた造語です。日々の暮らしを継続して営んでいくという理念が込められています。
私たちの暮らしは、動物や植物のほか、建物、エネルギー、畑、コミュニティなど、さまざまな要素と共存しています。パーマカルチャーは、それぞれの役割を果たしながら、負荷をかけたり、汚染したりすることなく永続する文化を具体的にデザインしていく手法です。
パーマカルチャーは、1970年代にオーストラリアで体系化されました。日本では1996年にパーマカルチャー・センター・ジャパンが設立され、現在ではパーマカルチャーを体験できる講座や宿泊施設なども登場しています。
農業は、名前の由来となっている通り、パーマカルチャーと密接に関係する営みの1つです。必要な食べ物を手軽に購入できるようになった今、私たちのほとんどが農業から離れた生活をしています。しかし、農業は本来、身近な日々の暮らしに深く寄り添いながら続いてきました。
パーマカルチャーには、心がけたい12の原則があります。中でも、以下の原則は農業を実践する際に自然と取り入れているのではないでしょうか。
雪解けによって山の表面に現れる模様を観察して、田植えの時期を決めたり、「里芋は田植歌を聞かねば芽が出ない」といった言い伝えを参考にしたり、現在でも役立つ農法がたくさん残っています。地域に伝わっている知恵や農業文化を語り継ぐことが、パーマカルチャーの目指すところです。
「永続可能な農業」と聞くと、なんだか難しそうと感じるかもしれません。しかし、次に挙げる事例もパーマカルチャーの手法です。手軽にパーマカルチャーを始めるのにおすすめの3つの手法をご紹介します。
コンパニオンプランツとは、お互いによい影響を与え合う植物同士を組み合わせ、一緒に植える手法です。光を好むナスと、日陰でも育つパセリや、土壌の病害を防ぐ効果が期待できるトマトとバジルなどの組み合わせがあります。
マメ科のクローバーやイネ科の麦などの緑肥は、連作による病害虫を防ぎ、菜園の土壌を一度リセットする効果があります。また、草刈りを緩和するため、除草剤の代わりにジャコウソウやイワダレソウなどのグランドカバープランツを利用すると、生態系への影響が少なくなります。
△クリムゾンクローバー
ニワトリは、雑草を食べ、フンをして畑を肥やし、歩き回って土壌を耕すなど、畑で大活躍してくれます。パーマカルチャーでは、移動式の鶏小屋を利用して、土壌改良に役立てています。作成する際には、防疫の観点から、農水省の飼養衛生管理基準を遵守する必要があります。
さまざまな国や地域には、環境に負荷をかけることなく共存してきた知恵や伝統が今も残っています。その地域に住む先輩の知恵を聞いたり、日本の暮らしにあった生活様式を学んだりしながら、パーマカルチャーを始める一歩を踏み出してみませんか。
▼参考文献
〇タキイネット通販, 果菜類と一緒に育てるコンパニオンプランツ
https://shop.takii.co.jp/selection/companion_plants1214.html
〇タキイ種苗(株), 緑肥の効果について,タキイの緑肥・景観用作物
https://www.takii.co.jp/green/ryokuhi/kouka/index.html
〇美の国あきたネット(秋田県公式サイト), グラウンドカバープランツを使った草刈りの省力化を実践するワークショップ
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/1710
〇農林水産省,飼養衛生管理基準について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_shiyou/
〇Permaculture Center Japan.
https://pccj.jp/about-pccj/
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!