コラム
公開日:2026.08.21

夏場のハウス管理では、高温対策として遮光ネットが広く利用されています。しかし、「導入したのにハウス内の温度が下がりにくい」「外張りと内張り、どちらを選べばいいか分からない」と悩む現場は少なくありません。遮光ネットの効果は、色、遮光率、設置場所(外張り・内張り)の組み合わせによって大きく左右されるため、栽培する作物やハウスの設備に合わせて選ぶことが重要です。
本記事では、それぞれの特徴や現場での具体的な使い方、換気設備と連動させた温度低下のコツを解説します。
遮光ネットを選ぶ際の判断基準は、「色」「遮光率」「設置場所」の3点です。作物の光飽和点やハウスの構造に合わせて選定します。
ネットの色によって「光の処理方法(拡散・反射・吸収)」が異なります。
太陽光を柔らかく拡散させてビニールハウス内全体を均一に明るく保ちます。直射日光を抑えつつ光量をしっかり確保できるため、着色不良を防ぎたいトマトやキュウリなどの果菜類に向いています。

△画像提供:日本ワイドクロス
赤外線や太陽光を強力に反射するため、遮熱効果に優れています。白と黒の中間的な使いやすさがあり、迷った際の選択肢として適しています。ただし、黒や白に比べて資材価格がやや高くなる傾向があります。

△画像提供:日本ワイドクロス
遮光力は非常に強力ですが、ネット自体が熱を吸収して高温になりやすい特徴があります。軟弱野菜の作業小屋や短日処理など、熱よりも「暗さ」を優先したい場面に向いています。

△画像提供:日本ワイドクロス
遮光率は「高ければ高いほど良い」わけではありません。光量を落としすぎると、作物の茎が細く伸びる「徒長(とちょう)」や花飛ばしを引き起こします。
| 作物 | 遮光率 (目安) |
ポイント |
|---|---|---|
| 果菜類 (トマト・キュウリ等) |
30%前後 | 強光による果実の日やけを防ぎつつ、光合成に必要な光量を維持します。 |
| 葉物類 (ホウレンソウ・コマツナ等) |
50%前後 | 地温の上昇を抑え、発芽不良や葉の萎れを防ぎます。 |
| 育苗・花き類 | 40%前後 | 親株の樹勢を維持し、活着をスムーズにするために遮熱性を優先します。 |
※以下の数値はあくまで一般的な目安です。地域や栽培時期、ハウスの構造によって適正値は異なります。
遮光ネットの展張方法は、遮熱性を最重視するなら「外張り」、操作性や資材の長持ちを重視するなら「内張り」が適しています。


△画像提供:日本ワイドクロス
ビニールハウスの屋根フィルムの外側にネットを被せる方法です。
熱エネルギーがハウス内に入る前に遮断できるため、ハウスの構造や気象条件にもよりますが、室内温度を内張りより1〜3℃ほど低く保ちやすい傾向があります。
台風や強風、紫外線のダメージを直接受けるため耐用年数が短くなります。強風時のバタつきを抑えるため、マイカ線での固定や収束作業の手間が発生します。


ビニールハウス内部のカーテン設備等を利用して設置する方法です。
風雨に晒されないためネットが長持ちします。手動・自動のカーテン装置と連動させれば、天候や時間帯に応じてサッと開閉できる扱いやすさがあります。
フィルムを透過した熱を内部で遮るため、ネットとフィルムの間に熱気が溜まります。十分な換気が行われないと、ハウス内が蒸し風呂状態になるリスクがあります。


・連棟ハウスや風の通りにくい立地で、室温が上がりやすい場合
・高温障害による果実の品質低下を防ぎたい場合
・カーテン装置などの内張り設備がないハウス
外張りは、2人でネットの両端を持ってかぶせるとスムーズに設置できます。
1人で作業する場合は、遮光ネットの端に重り(木片やビニールパイプなど)を結んだロープを取り付け、ハウスの反対側へ投げ渡す方法もあります。反対側からロープを引っ張ることで、1人でも位置調整や展張が簡単にできます。
・天候や時間帯(朝夕と昼間)に合わせてこまめに開閉したい場合
・強風地帯で、外張りネットの管理や固定作業が負担になる場合
・既存の駆動パイプやカーテン設備を有効活用したい場合
内張りはネット上部に熱気が溜まるため、天窓を開けるか妻面の換気扇を稼働させ、上昇した熱を逃がす空気の動線をセットで確保しましょう。
※高所での作業や手動での開閉には一定の労力が伴うため、安全面や作業体系に合わせてご検討ください


遮光ネットは単体で使うよりも、ハウス内の「空気の流れ」を作る資材と組み合わせることで、より効率的な温度管理が期待できます。
ネットで直射日光を遮っても、空気が停滞していると葉の周囲に熱がこもります。 循環扇を稼働させて常に緩やかな風(作物や環境にもよりますが、一般的に風速0.3〜0.5m/s程度が目安) を動かすことで、作物の蒸散作用(葉から水分を逃がして体温を下げる働き)が促され、葉温の上昇を効率よく抑えられます。
内張りカーテンを使用する場合、ネット上部に溜まる熱を排気するため、谷部や天窓の換気口を開けて排気ルートを確保します。 サイド(側窓)からの吸気と高所からの排気を組み合わせた「煙突効果」を活用すると、ハウス全体の空気がスムーズに循環します。
遮光ネットの効果を十分に引き出すには、色や遮光率、設置方法に加え、換気設備との組み合わせも重要です。作物や栽培環境に適した方法を選び、夏場の安定した栽培環境づくりにつなげましょう。
▼参考サイト
〇minorasu「農業用遮熱ネットで夏のハウス栽培を対策!高温対策の効果と選び方」,2024
https://minorasu.newgreen.inc/81009
○ZeRo.agri「遮光とハウスの高温対策①ー遮光の方式と外部遮光についてー」,
https://www.zero-agri.jp/guide/heat-countermeasures-for-greenhouses1/
○日本農業システム「農業用遮光ネットの選び方を徹底解説!取り入れるメリットや種類、注意点」
https://www.nou.co.jp/shop/pages/contents_syakou_net2.aspx
○マイナビ農業「遮光ネットで農作物を日差しから守る! 正しい選び方・使い方は?」,2022
https://agri.mynavi.jp/2022_08_10_200337/
○猫型ポケット「遮光ネット選定・設置記録アプリ」
https://nekopoke.jp/%E9%81%AE%E5%85%89%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E9%81%B8%E5%AE%9A%E3%83%BB%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AA/
○農研機構「温室内の気流・気温分布を改善するための循環扇の制御手法」,2011
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2011/141b0_10_02.html
○農業ざんまい「煙突効果の計算でビニールハウスの換気量と温度差を活用」
https://uitec.net/entotsukoukanokoutoondosawokatsuyou.html


ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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