コラム

【ナスの品種一覧】特徴や栽培目的別のおすすめ品種をわかりやすく紹介

公開日:2026.08.26

ナスが日本に伝来した時期は古く、奈良時代には食べられていたとされています。その長い栽培の歴史の中で、様々な地方品種が発達し、果形や用途が異なる多くの品種が栽培されてきました。加えて、近年では単為結果性を持つ新品種が登場するとともに、従来にはなかった珍しい品種も数多く発表されています。
このようにナスは品種数が多く、栽培目的や用途に応じてどの品種を選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ナスの代表的な品種を整理するとともに、栽培目的や用途別におすすめ品種を紹介します。

1.ナスの品種分類と特徴

ナス主要品種の分類 

表1は、果形に注目して、日本で栽培されているナスの主要品種と特徴を整理・比較したものです。

表1 ナスの一般的な品種分類

果形 品種名 種苗
会社
(略称)
適する作型 単為結果性 その他特性
露地普通 ハウス半促成 ハウス促成
長卵 竜馬 タキイ × 短節間、強樹勢
PCお竜 タキイ PCSS後代 樹勢や草姿は「竜馬」に準ずる
式部 渡辺 × 果皮が薄く軟らかい
秋どりナス秋穫祭 トーホク × 5月播種で8月から収穫できる抑制栽培に特化した品種
ごちそう サカタ × 房なり性であり、単花は果長10~12cm、房なり花は果長7~8cmで収穫
中長 千両 タキイ × 短節間、強樹勢
とげなし千両2号 タキイ × とげなし、樹勢は「千両」よりおとなしめ
PC千両EX タキイ PCSS後代 樹勢や草姿は「千両」に準ずる
あのみのり 日農 暖地〇 Talina後代 側枝の伸びが遅いので、整枝管理を省力化した栽培が可能
あのみのり2号 日農 暖地〇 Talina後代 「あのみのり」に比べ、側枝がよくでるので、多収になりやすい
あのみのりパワー 日農 Talina後代 青枯病および半枯病抵抗性あり
とげなし
単為結果の安定性は「あのみのり・2号」がやや優れるため、露地栽培に向く
筑陽 タキイ × 煮炊き用の他、漬物にも適する
PC筑陽 タキイ PCSS後代 樹勢や草姿は「筑陽」に準ずる
夢日記 八江 × とげなし。厳寒期にも色落ちしにくい
大成早生長茄 むさし × 果皮が軟らかく、高温期にもつやなし果になりにくい
大豊早生長茄 むさし × 「大成早生長茄」より多収だが、水不足が続くとつやなし果が発生
省太 Talina
後代
厳寒期に曲がり果や細果が少なく、ボリュームがある
種子は一般販売していない
早生長紫 丸種 × 果実は長さ40cm以上になる。特に油炒めや焼きナスに適する
大長 庄屋大長 タキイ × 種子数が少なく、果皮が軟らかいので焼きナスに特に向く
新長崎長茄子 中原 × 果長38~40cmで収穫、開花後日が経っても果皮が硬くなりにくい
小丸 梵天丸 渡辺 × 一本漬用は果長6~8㎝で収穫
山形系と秋田系がある
山形N1号 Talina後代 山形県在来「うす皮丸茄子」×「あのみのり」後代後代のF1品種
一本漬に特に向く
種子は一般販売していない
大丸 会津早生丸 菊池 × 直径6~8cmで収穫、果皮はやや硬いが高温期に色あせしにくい
太助大丸 カネコ × 果重150〜200gで収穫
大果で収穫しても肉質が緻密
殿様 小林 × 在来「賀茂茄子」の一種
とげが非常に少ない
長卵系

最大果径4cmで収穫した場合に果長10~12cm・果重60~80g程度になる品種群です。
主に関東地方で好まれて地方品種化されたものが多いですが、関東向けの出荷が多い高知県でも「竜馬(りょうま)」「PCお竜(PCおりょう)」などの栽培が盛んです。

▲PCお竜

中長系

最大果径4cmで収穫した場合に果長15cm・果重100g程度になる品種群です。
主に関西地方で好まれていた果形で、代表品種に「千両(千両)」があります。

▲千両

長系

最大果径4cmで収穫した場合に果長20~25cm・果重120~150g程度になる品種群で、いわゆる「長ナス」です。
主に西日本(九州および中・四国地方西部)や東北地方で好まれてきた果形で、代表品種に「筑陽(ちくよう)」があります。

▲筑陽

大長系

最大果径4cmかつ果長30cm以上で収穫する品種群の総称で、特に九州地方で好まれており、代表品種に「庄屋大長(しょうやおおなが)」があります。
一般に皮が柔らかいのが特徴で、食味のよさから他地域でも直売所を中心に少しずつ人気が出ています。

▲庄屋大長

小丸系

最大果径4cmで収穫した場合に果長6cm以下・果重30g程度で収穫する品種群で、いわゆる「小ナス」です。
東北地方では小ナスを1本丸ごと漬物にする料理が発達しており、それに特化した品種とも言えます。代表品種に「梵天丸(ぼんてんまる)」があります。

▲梵天丸

大丸系

最大果径10cm以上で収穫する品種群で、果形がまん丸いのが特徴です。
京都伝統野菜の「京賀茂なす(きょうかもなす)」が有名ですが、北陸・東北地方にも類似した地方品種があります。

▲京賀茂なす

特色ある品種の一覧

表1では、果皮色やへた部が濃紫色で、果汁量や果肉の緻密性が中程度の一般的な品種を整理しました。
一方、食生活・需要の多様化に対応した珍しい品種がここ10年で多く発表されていますので、既存品種とともに表2に整理しました。

表2 特色あるナス品種の分類

特徴 品種名 種苗
会社
(略称)
適する作型 単為結果性 その他特性
露地普通 ハウス半促成 ハウス促成
果皮色 白色 味しらかわ 丸種 × 果実27㎝程度で収穫(長型)
鮮やかな紫色 炒めて台湾 トキタ × 果重110g、長さ28cmで収穫
油との相性に優れ、加熱調理後の色が鮮やか
淡緑色 白丸茄子 中原 × 長卵型で樹勢が強い
耐暑性に優れる
果皮はやや硬いが果肉が軟らかいので煮物に適する
淡緑色 白神 大和 × 果長15~20cm程度で収穫(中長)
果肉が緻密で調理の幅が広い
緑色 長緑 丸種 × 果長30cm程度で収穫(大長)
甘味が強い
水ナス 丸型 夢しずく トキタ × 果重200~250gで収穫
樹勢が強いので着果過多に注意
長卵型 水ナス トーホク × 果実を握ると汁がしぼれるほどのやわらかい肉質
丸型 水の匠 丸種 × 果重150g程度で収穫
中長型 美男 渡辺 × 草勢が旺盛で長期収穫に向く
米ナス とげなし 夢ライブ 八江 × 果長15~20cm、果重200g程度で収穫
他の米ナス系品種より樹勢はおとなしめ
多収 くろわし タキイ × 果形は短卵大型で350g程度で収穫
果色は濃黒紫色で、収穫期を過ぎても色あせしない
大果 米ナス トーホク × 350gの大果で収穫可能
肉質が緻密で、田楽、揚げ物、煮物など加熱料理に最適
鮮やかな紫色 絹むらさき 小林 × 米ナスには珍しい鮮やかな紫色(へたは緑色)が特徴
果長20cm程度で収穫、肉質が緻密で、田楽、炒め物、揚げ物に向く
その他 食味 究極の茄子 小林 × 長卵型だが180~350gと大果で収穫可能
草勢が極めて強く栽培容易
肉質は緻密で歯切れ良く、漬物やソテー、煮物など様々な料理に合う
果実サイズ
食味
とろとろステーキナス トーホク × 果長25cm、果重500gで収穫
肉質は水ナスに近く、加熱すると果肉がトロトロになって絶妙な食感となり、旨味が凝縮されて濃厚な味わいとなる
「白ナス」等果皮色が異なる品種

名前のとおり果皮色が白色や緑色の品種です。ナス果実の紫色はアントシアニンという色素によるものですが、アントシアニンは果皮細胞中の「液胞」という袋の中に貯蔵されています。そして、包丁で切ったり加熱すると、液胞が壊れてアントシアニンを含んだ液がしみ出る性質があります。
ナス入りの味噌汁が典型的ですが、アントシアニンが染み出すことで汁が濁って見える場合があり、外食産業では敬遠されることがあります。
そこで「ナスの食感は重要だが、調理時にアントシアニンが出てくるのは困る」場合に、白ナスなどの果皮色が異なる品種が用いられます。

▲白ナス

水ナス

一般的な品種より果汁の量が多い品種の総称です。果汁量が多いとともに、アク(クロロゲン酸)の量が少ないため、生食にも適しています。
反面、果肉・果皮が柔らかい特徴があり、ぬか漬けなどにした場合にかみ切りやすい反面、収穫時の取り扱いには注意が必要です。

▲水ナス

米ナス

明治以降に欧米から導入された系統を国内で改良した品種の総称です。
果皮が硬い反面、果肉が緻密な特性があり、特に揚げ調理では油っぽさを感じにくい特徴があります。

▲米ナス

その他特徴的な品種

上記には当てはまらないものの、特徴が明らかな品種として、大丸系と中長系の中間の果形で180~350gで収穫し調理適性の幅が広い「究極の茄子」や、500gで収穫し果汁が多くステーキ用に特化した「とろとろステーキナス」などがあります。

2.【用途・栽培目的別】ナスのおすすめ品種

1.育てやすい品種

ハウスで栽培するのであれば、「千両」やその単為結果性品種「PC千両EX」がもっとも育てやすいと考えられます。樹勢が強い上に節間が短いという両立しにくい特徴を持っているためです。

また、筆者の経験ですが、同一のハウスで「筑陽」と「千両」を栽培したところ、下級品も含めた収量は同等でしたが、上品収量は「千両」が多い結果でした。これは、「筑陽」は曲がり果や細果等の発生により上位等級率が50%程度にとどまるのに対し、「千両」はそれらが少ないことから上位等級率が70%程度あったからです。

2.収量が多い品種

露地栽培では、表1や2に示した品種群のなかでは、米ナス「くろわし」がもっとも収量が多いという東京都での試験例があります。
一方、「庄屋大長」や「早生大丸」のような大果で収穫する品種や「白ナス」等の品種は、中長型の「千黒2号」より収量が低いようです。

3.単為結果性品種

施設栽培では、低温期や日照不足などにより受粉が不安定になる場合があります。そのため、受粉しなくても果実が肥大する単為結果性品種は、安定生産を実現する手段の一つとして注目されています。
単為結果性品種は、タキイ種苗が出している「PC」シリーズのほか、農研機構が育成した「あのみのり」シリーズもあります。
「あのみのり」シリーズのうち、青枯病が発生するハウスでは新品種「あのみのりパワー」がおすすめです。

▲あのみのりパワー(画像提供:農研機構)

一般的な台木「台太郎」に接ぎ木した「千両2号」が全て青枯病が発生するほ場であっても、「あのみのりパワー」は青枯病の発生が抑えられる特性を持っています。
ただし、「あのみのりパワー」は促成栽培では花数が極端に少なくなりやすいほか、半身萎凋病への抵抗性は持っていませんので、台木への接ぎ木や作型による品種の使い分けが重要です。

以上から、青枯病の発生がないハウスで促成栽培を行う場合は、「あのみのり2号」を栽培するとよいでしょう。

なお、水ナスや米ナス等の珍しい品種で単為結果性を持つ品種は、記事発表時点(2026年8月)では発表されていないようです。

  • ▼関連記事

4.珍しい品種(白ナス、とろとろ系など)

白ナスや水ナスなど珍しい品種を栽培する場合は、種苗会社のカタログに記載されている「作型欄」をよく確認して選ぶ必要があります。

「作型欄」にハウス促成や半促成の記載がない品種は、露地栽培でしか栽培試験を行っていない場合が多く、ハウス栽培でどの程度収量が上がるか十分に確認されていないためです。
上記の観点で考えると、ハウス栽培においては、白ナス(実際には淡緑色)では「白神」(大和種苗)、水ナスでは「夢しずく」(トキタ種苗)が適しています。

また、「ステーキナス」系では、ハウス半促成作型の記載がある「究極の茄子」(小林種苗)が無難であり、一部で人気が高い「とろとろステーキナス」は、ご自身のハウス環境で十分に栽培できるか、試験栽培を経てから導入しましょう。

3.ナスの品種選び3つのポイント

ポイント1:市場を把握する

まず、市場(取引先)がどのような品種を求めているかをよく把握しましょう。市場が一般的な中長系を求めている場合は、無理な冒険をする必要はありません。

ポイント2.作型にあった品種を選択する

市場ニーズを確認したら、「作型欄」に促成栽培や半促成栽培などハウス栽培への適性が記載されている品種を選びましょう。
適作型の確認は、一般的な中長型や長型だけでなく、珍しい品種を取り入れる場合も極めて重要です。

ポイント3.圃場にあった品種を選択する

単為結果性や病害抵抗性といった「特殊能力」を有する品種を、ご自身のほ場条件に合わせて選ぶようにしましょう。

以上、本記事では、日本で栽培されている主要なナス品種を整理・分類し、その中から栽培目的や用途別におすすめ品種を紹介しました。

ただ、ナスは想定していなかった用途で優れた特性を発揮する品種もあります。
例えば、筆者自身の経験ですが、調理した焼きナスを冷凍して後日解凍して食べる場合、一般の品種より「あのみのり」系の単為結果性品種の方が優れていました。それは、一般品種(ホルモン処理)は、解凍時に果汁が多く出てしまうのに対し、「あのみのり」系の単為結果性品種は果肉が緻密で果汁の流出が少なかったからです。

このように、ニッチな用途では思わぬ品種が適する場合もあります。そのため、日頃から作物を観察し、品種ごとの特性を把握することが重要です。

  • ▼関連記事

▼参考文献
〇西 貞夫監修「新編野菜園芸ハンドブック」p574-576,2001
〇堀江 秀樹,安藤 聡「調理を考慮したナスの品種特性評価」,2014
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010871335.pdf
〇大西 浩之,宮澤 大介,吉岡 弘毅「糠漬けに伴うナスの物性変化と品種間差」,2019
https://www.oyg.ac.jp/lib/wp/wp-content/uploads/45a5b8541f83172dd069457f6ce9f6e8.pdf
〇西本 登志「奈良県在来のサトイモ,ナスおよびツケナの食味特性に関する研究 ‘味間いも’,大和丸ナスおよび大和マナについて」,2018
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030922767.pdf
〇田邊 範子,小寺 孝治,澁澤 英城,沼尻 勝人「〔野菜・作物の優良品種の選定と育成〕ナスの着果周期とその品種間差異」,2003
https://www.tokyo-aff.or.jp/uploaded/attachment/7041.pdf
〇小巻 康平「新品種「あのみのりパワー」を用いた 新たなナス青枯病対策」,2026
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/264573/tyu-4_nasuaogare_anomi.pdf


▼参考サイト
〇農林水産省「ナスはどこからきたの?」
https://www.maff.go.jp/j/kids/agri/nasu/n01.html
〇農林水産省「ナスのいろいろな種類」
https://www.maff.go.jp/j/kids/agri/nasu/n03.html
〇一般社団法人日本植物整理学会「植物Q&A『ナスの外果皮はどうなっているのですか』」,2022
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=5419

ライタープロフィール

【石坂晃】
1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。









Facebook