コラム
公開日:2020.05.25
近年、地球温暖化や異常気象による農作物への被害が、世界的に深刻化しています。もちろん日本も例外ではなく、大型台風の直撃や記録的な大雨などは、記憶に新しいところではないでしょうか。
そうした驚異から農作物を守る技術として、注目を集めているのがバイオスティミュラントです。
従来の作物栽培とは違う角度からアプローチする概念として広がりを見せており、その市場規模も年々大きくなっています。今回はバイオスティミュラントについてと、おすすめの資材についてご紹介します!
バイオスティミュラントとは一体なんなのでしょう。農業資材メーカーなど関連企業により発足されたバイオスティミュラント協議会によると、「植物に対する非生物的ストレスを制御することにより気候や土壌のコンディションに起因する植物のダメージを軽減し、健全な植物を提供する新しい技術」とされています。
少し難しい表現になっていますが、つまりは「高温や乾燥、物理的な被害などをできるだけ抑えて、収量アップを目指す技術」ということです。
従来の農業では、
①優秀な植物遺伝子の開発
②肥料
③農薬による生物的ストレス(害虫・雑草など)の緩和
以上の3点が生産性アップの主な手法として用いられてきました。バイオスティミュラントはこれらに当てはまらない概念や技術のことを指し、作物の本来持つ生産性を最大限引き出すことを目標とします。
人間に例えると、「サプリメント(肥料)や薬(農薬)ばかりに頼らず、日々の食事や生活習慣を良くすることで、暑さや気候の変化に負けない強い体をつくろう!」というイメージです。農薬や肥料の使用を抑え、有機栽培にも大変有用な技術と言えるでしょう。
根張り促進型肥料「ライゾー」/(株)ハイポネックスジャパン
バイオスティミュラント系の資材の中から、おすすめの商品をご紹介します。バイオスティミュラント系の製品は幅広く存在しますが、その中でも施設野菜と相性が良さそうなものをピックアップしました。
植物にかかるストレスを緩和し、耐暑性・耐寒性のアップが期待できます。神戸大学の研究によると、未処理区域のトマトが高温により葉枯れが起きたのに対し、処理済み区域の株は青々と葉を付けたままで推移しており、一定の効果が認められたそうです。
製造・販売:(株)サカタのタネ
海藻特有の多糖類、各種ミネラル・ビタミン・アミノ酸・微量要素など60種類以上の栄養素、植物成長ホルモンなどが豊富に含まれた葉面散布用水和剤です。収量アップだけでなく、連作障害の緩和や、収穫された作物の貯蔵期間が長くなる効果が期待されています。
輸入販売元:アンデス貿易(株)
有機活力液肥「ボンバルディア」/(株)ハイポネックスジャパン
様々なメリットが期待できるバイオスティミュラント資材ですが、実はその多くの効果には即効性がありません。そのため生育の勢いづけや、生物ストレスの緩和に、肥料や農薬も上手に併用する必要があります。
従来の手法の基本をしっかり押さえつつ、バイオスティミュラント資材の導入を検討するのが、より高い効果を得るための基本となるでしょう。
以上、バイオスティミュラント資材についてご紹介しました。
聞きなれない用語で、難しい話題のように聞こえたかもしれませんが、実は昔から広く使われているぼかし肥料も、バイオスティミュラントの考え方に沿っているものです。バイオスティミュラントはいわゆる「先人の知恵」を科学した技術とも言えます。そんな「古くて新しい技術」の導入を、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
▼参考文献
〇バイオスティミュラントについて、アリスタ ライフサイエンス株式会社
https://www.japanbsa.com/biostimulant/definition_and_significance.html
〇バイオスティミュラントについて、アリスタ ライフサイエンス株式会社
https://arystalifescience.jp/guide/bs.php
〇バイオスティミュラント系資材、IPM資材館
https://www.ipm.vc/product-group/34
ライタープロフィール
【オオタニ コウスケ】
北海道出身。
酪農経営について学んだ後、大手農業機械メーカーにて勤務しました。現在は機械メーカーで培った経験と知識を元にライターとして活動しています。得意分野は酪農、トラクタ、作業機、噴霧器やポンプに関することです。