コラム
公開日:2018.03.07
農薬には「カビ」「細菌」の侵入を防ぐ「予防剤」と、侵入してもカビ・細菌の繁殖を防ぐ「治療剤」に分類されます。(農薬のラベルに予防効果、治療効果などの特徴、使用上の注意点が記載されています。)
一般に予防効果がある薬剤は様々な病害に予防効果が期待でき、価格も安い傾向にあります。一方、治療時は対象病害の種類が限定的で、価格も高い傾向にあるようです。
農薬残布方法の基本は、これらをうまく使い分け、病原菌が作物に入る前のタイミングで「事前に防ぐ」予防剤を中心にローテーション散布することで農薬の使用量、農薬散布の頻度を下げることがコツといわれています。もちろん、病害が発生した場合は治療薬剤の出番となります。
実際の作物栽培の場面で、植物体に全く菌が侵入していないタイミングでの予防剤農薬残布はなかなか徹底できていないのが現実です。もちろんその必要性を感じていないケースもありますが、農作業に忙殺されてそれどころではないことが多いと思います。
多くのカビ(糸状菌)、細菌による病害は次のような順序で被害発生に至ります。
高湿度条件下では作物表面に病害(症状)が見える前のタイミングでも、すでに病原菌が体内中に蔓延しているケースがあります。しかし、実際はこの状況でも予防薬剤を散布しているケースが大部分です。
被害を最小限に抑えるコツとして、高湿度条件などでは病害の症状が出ていない段階でもあえて治療薬剤を散布することで、上述の菌の体内繁殖を停止させることです。
「治療薬剤は高いくせにすぐに効かなくなる」というトラブルが散見されます。
無数の病原菌の中には、突然変異で治療薬剤が効かない菌が含まれています(耐性菌)。当然その菌は農薬散布後も繁殖を続けます。同じ治療薬剤を使い続けるとその耐性菌が大部分を占めるようになり、特効薬と言われる治療剤であってもみるみる効果がなくなってしまいます。
新薬、特効薬の散布の間に「系統」が異なる薬剤散布を挟むことが耐性菌を繁殖させないためのコツです。「系統」の種類も農薬のラベルに記載されていますので、これを機会に確認してみると良いでしょう。