コラム
公開日:2020.07.24
べと病はきゅうりや玉ねぎ、ネギなどの野菜でよく知られていますが、ブドウやバラなどの果樹や花きにも発生する病気です。葉に黄褐色の斑点ができ収量や観賞価値の低下を招き、酷くなると株が枯死します。
多発してからの防除は困難なため、予防が重要になります。発生後は農薬の散布が効果的ですが、葉っぱに斑点のできる病気は多くあり間違いやすい病気もあるので、注意が必要です。 そこでここからは、葉っぱでわかるべと病の見分け方と、効果的な対策についてお伝えしていきます。
下位葉から発生して、葉に境界のはっきりしない小さな斑点が生じ、後に黄褐色で葉脈で区切られた多角形になります。植物によっては病斑の輪郭が不鮮明なものもあります。葉裏には灰色っぽいカビが付きます。次第に上位葉にも広がり、病斑同士は融合して大型病斑になります。やがて天気の良い日に葉がガサガサになって枯れあがります。
よく似た病気に、斑点細菌病や褐斑病があります。斑点細菌病も病斑が葉脈で区切られていますが、病斑部に白い細菌の塊ができ葉裏にカビの付かない点から区別できます。褐斑病は病斑が不整形で丸みがあります。しかし病気が進行した大型病斑はべと病とよく似ており、同じ葉の中にべと病と褐斑病が混在していることもあるため、肉眼での区別は困難です。
診断の精度を上げるには、安価なポケットマイクロスコープやデジタルマイクロスコープの使用がおすすめです。病斑を50倍の倍率で観察して病原菌の特徴的な形を見分けます。図1のように褐斑病は分生子(ぶんせいし)柄の長い線が、べと病は分生子の黒い点が見られます。他にも炭疽病を剛毛で判別することもできます。
(図1)
出典元:岡山県農林水産総合センター農業研究所 病虫研究室
多湿条件で多発するので換気が重要です。密植や過繁茂を避け、風通しや採光を良くします。過度の潅水も控えましょう。
感染拡大を防ぐため罹患部は見つけ次第除去し、焼却するなど圃場に残さないよう処分します。収穫残差のすき込みは次作の感染源になる恐れがあるので避けましょう。
玉ねぎなどでは、必要に応じて栽培前に太陽熱消毒による土壌消毒を苗床で行いましょう。梅雨明け以降に行い、元肥を撒き、畝を立て潅水します。透明マルチなどで30~50日程、播種の直前まで被覆します。本圃は梅雨明け以降50日間、5cm程水を張る潅水処理を行うと、発生予防に効果的です。
病気の発生前から農薬の予防散布を行うことが重要です。発生を確認したらすぐに治療効果の期待できる農薬を散布しましょう。発生して時間が経つほど防除は難しくなるため、予め使える農薬をリスト化しておくことをおすすめします。
べと病を含む複数の病気を同時に防除できる農薬もあり、農薬の使用量や散布の手間などを減らしたい場合や、病気の見分けに自信が無い場合などに便利です。
発生後の防除の難しいべと病には徹底した予防策が重要です。土壌消毒や農薬の予防散布に力を入れましょう。発生後はできる限り早く治療効果のある農薬を散布し被害を抑えましょう。
▼参考サイト
〇キュウリべと病,愛知病害虫情報,愛知県
https://www.pref.aichi.jp/byogaichu/seitaitoboujyo/3-kyuuri/kyuuri-beto.html
〇ハクサイべと病,病害虫・生理障害,タキイ種苗株式会社
https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/aha/disease/beto/
▼参考文献
〇病害レポート べと病、株式会社武蔵野種苗園
http://www.musaseed.co.jp/disease/べと病/
〇拡大観察機器を用いたキュウリ褐斑病、べと病,炭疽病の簡易な見分け方,岡山県 農業研究所
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/564890_4563137_misc.pdf
〇タマネギ,有機栽培記事マニュアル,園芸課,農林水産部,佐賀県
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00343583/3_43583_6_2016225141819.pdf
〇タマネギべと病防除対策マニュアル,佐賀県
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00370267/3_70267_145580_up_82jy2qdq.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。