コラム

気門封鎖剤でかしこく防除!正しい使い方とおすすめ薬剤3選をご紹介

公開日:2026.01.22

施設栽培は露地とは異なり、降雨や気温の影響を受けにくく、害虫が発生・増殖しやすいため、害虫の防除は欠かせません。しかし、防除回数が多くなるため、同じ系統の農薬を繰り返し使用することで薬剤抵抗性がつきやすくなり、年々防除効果が落ちてしまいます。
また、施設内は天敵昆虫や受粉促進用のハチ類が放飼されていることも多いため、これらに影響が少ない農薬選びも重要です。

そこで今回は、連用しても抵抗性がつくことがなく、天敵やハチ類に影響が少ない「気門封鎖剤」について、作用する原理、種類、効果的な使い方について解説します。
筆者おすすめの気門封鎖剤を3つご紹介しますのでぜひ最後までご覧ください。

1.気門封鎖剤とは?薬剤の種類と特徴

気門封鎖剤とは?

アブラムシ、コナジラミ、ハダニなどの害虫は、口で呼吸をせず、腹部に多数ある気門を通じて呼吸しています。害虫の表面をねばねばした粘性のある膜で覆うことができれば、気門をふさぐ(≒息をできなくする)ため、殺虫できます。

以下の原理を利用した殺虫剤が気門封鎖剤です。

△画像提供:協友アグリ株式会社






💡気門封鎖剤の主なメリット

①使用回数を定めていないため、何回でも使用できる
②薬剤抵抗性がつかず、天敵やハチ類への影響も少ない
③ほとんどの薬剤で「野菜類」としてグループ登録されているため、他の作物にかかっても食の安全に影響を与えにくい
④うどんこ病の同時防除が可能





気門封鎖剤の種類


でんぷん系

でんぷんに酵素を添加して糖にしたものに、カビやアリが発生・寄生しないように、還元処理を施した薬剤です。でんぷんや糖といった食品由来の成分を原料としていることから、適正使用条件下においては、人畜に対する安全性に配慮された資材とされています。
反面、希釈倍率が100倍程度と比較的低く、多量に使用する必要があるため、使用時には均一に希釈されるようによく混ぜる必要があります。

せっけん系

ヤシ油やパーム油に含まれる脂肪酸グリセリドに、カプリル酸やカプリン酸など特定の脂肪酸を結合させて「けん化」した薬剤です。
でんぷん系に準じて人畜に対する安全性が高く、また魚、ミジンコ、藻類など水生生物への害も非常に少ないのが長所です。

オイル系

植物油に界面活性剤等を加えて製造した薬剤です。
一部の薬剤は高い殺卵作用を期待できる反面、特に高温時の散布で油が染みたような薬害が生じることがあります。

  • ▼関連記事

2.気門封鎖剤の効果的な使い方を解説

ここからは気門封鎖剤の効果的な使い方と注意点をご紹介します。

・害虫の発生初期に散布する

先に説明したとおり、気門封鎖剤は害虫の気門をふさいで防除する薬剤であり、接触毒や食毒効果はありません。
よって、害虫がまん延した後に気門封鎖剤で防除しても、すべてを防除することができません。

・害虫に直接かかるように葉の裏まで散布する

気門封鎖剤は害虫に付着した薬液が乾くと効果が現れます。ところが、施設栽培で問題になっているアザミウマ類、コナジラミ類、ハダニ類などの害虫は、一般的には葉裏に生息しています。
よって、葉裏まで丁寧に散布しなければ効果が期待できません。

・数日おきに複数回散布する

サフオイル乳剤でのハダニやタバココナジラミなど一部の例外を除き、ほとんどの気門封鎖剤は卵を駆除する効果はありません。そのため、気門封鎖剤の散布で成虫や幼虫を防除できても、卵までは防除できていないので、数日たつと卵から孵化した幼虫が見えるようになります。
よって、気門封鎖剤を中心に防除する場合、5~7日後にもう1回散布することが非常に重要です。

・薬害に注意

気門封鎖剤特有の薬害が発生しやすい条件は報告されていませんが、化学農薬で薬害が起きやすい状況(天候、品種、徒長などの生育不良)では、気門封鎖剤も薬害を起こしやすいと言えます。
特に他の薬剤と混用する場合は、気門封鎖剤はもちろん、できれば組合せ相手の混用事例集も確認するなどの対策を講じましょう。

3.気門封鎖剤おすすめ3選を紹介

ここからは筆者おすすめの気門封鎖剤3選をご紹介します。

エコピタ液剤(協友アグリ株式会社)

※画像提供:協友アグリ株式会社



「でんぷん系」気門封鎖剤の代表と言える薬剤です。野菜類(100倍)で一括登録されているほか、トマト、いちご、きゅうり等の主要な果菜類のコナジラミ類とうどんこ病には200倍まで適用があります。
作物に対する安全性も高く、安心して使用できる薬剤です。ただし、一般の農薬より高濃度で散布するので、薬液タンク内を十分にかき混ぜることが重要です。

※外部サイトにリンクします








フーモン(日本化薬株式会社)

※画像提供:日本化薬株式会社



「せっけん系」気門封鎖剤の代表と言える薬剤です。野菜類(1000倍)で一括登録されているので、通常の殺虫剤と似た感覚で使用することができます。
さらに、フーモンは、農薬だけでなく、展着剤としての使用も可能であり、果実の汚れが生じやすい作物で汚れが目立たなくなる効果も確認されています。
ただし、ストロビルリン系薬剤との混用は薬害を生じやすいため、注意が必要です。

※外部サイトにリンクします








サフオイル乳剤(OATアグリオ株式会社)

※画像提供:OATアグリオ株式会社



「オイル系」気門封鎖剤の代表と言える薬剤です。サフオイル乳剤の最大の長所は、ダニ類に強いことです。
具体的には、いちごの重要害虫であるハダニでは孵化直前の卵内に有効成分が浸入することによる殺卵効果が認められているほか、ナスやピーマンの重要害虫であるチャノホコリダニにも適用があります。
ただし、展着剤の加用が推奨されているなど取扱いが難しい面もありますので、切り札剤的な使い方をするとよいでしょう。










以上この記事では、気門封鎖剤について作用原理・種類・効果的な使い方と、筆者おすすめの気門封鎖剤3選を紹介しました。

害虫の気門をふさいで防除することは最近の話ではありません。古くは江戸時代に、クジラの油を、水を張った水田にまいて油膜をつくり、そこに稲に付いている害虫を竿などで払い落として防除する方法が広く行われていました。
昭和初期まで一般的な防除方法だったそうです。このことからも、気門封鎖は確実な防除法と言えますが、近年再び注目されるようになったのは、製剤技術や害虫研究の進歩による面が大きいと考えられます。

気門封鎖剤は、正しく使えば薬剤抵抗性や天敵への影響を抑えながら、防除の選択肢を大きく広げてくれる資材です。害虫の発生状況や作物に応じて、ぜひ日々の防除体系に取り入れてみてください。

  • ▼関連記事




▼参考サイト
〇千葉県,気門封鎖剤による病害虫防除
https://www.pref.chiba.lg.jp/annou/shokubo/documents/r7shishin010808.pdf
〇日本植物防疫協会,還元澱粉糖化物(エコピタ®)液剤の作用特性,協友アグリ株式会社 太田 泰宏
https://jppa.or.jp/archive/pdf/62_11_53.pdf
〇環境省,水産動植物の被害防止に係る農薬登録基準の設定を不要とする農薬について(脂肪酸グリセリド)
https://www.env.go.jp/content/900544428.pdf
〇アグリナレッジ,北日本病害虫研究会報,北日本病害虫研究会,ナミハダニおよびカンザワハダニに対する気門封鎖型薬剤の殺虫効果
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030770795.pdf
〇協友アグリ(株),エコピタ®液剤
https://www.kyoyu-agri.co.jp/prod/product/21597/
〇日本化薬(株)アグロ事業部,フーモン
https://www.nipponkayaku.co.jp/agro/products/fuhmon/
〇OATアグリオ(株),サフオイル乳剤
https://www.oat-agrio.co.jp/oat_suff/
〇東京農工大学,植物油がハダニの卵を殺すメカニズムを解明,国立大学法人 東京農工大学,2020年10月8日
https://www.tuat.ac.jp/documents/tuat/outline/disclosure/pressrelease/2020/20201008_01.pdf
〇農林水産省,消費者の声,お米の作り方
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0202/01.html

ライタープロフィール

【石坂晃】
1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。









Facebook