コラム
公開日:2019.01.15
丹精込めて作った自慢の野菜も単にJAを通して出荷するだけでは、他の生産者の野菜と一括りに同じ価格で販売されることになります。農家の皆さんなら誰でも一度は「作った野菜をブランド化して自分達で値段を付けて販売したい!」と考えたことがあるのではないでしょうか。
「ブランド化には産地形成やJAのバックアップなど大掛かりな体制を整えたり、販売所を作ったりと大変だから…」と諦める必要はありません。個人でも地域性を活かしたブランド化は十分可能ですし、実店舗を構えなくてもインターネット上で販売するなど方法は色々あります。
そこで、ここからは個人で野菜のブランド化する際に欠かせない【3つのポイント】について紹介していきたいと思います。
最近では簡単に美味しいものが手に入るので、”美味しい”というだけではお客さんを呼び込むことは難しくなっています。
口コミだけで全国からお客さんが押し寄せるくらい美味しい野菜が作れるのが一番ですが、産地の地域性を活かすことで他とは違う個性を比較的簡単にアピールできます。
例えば「京野菜」や「加賀野菜」と聞くと、それだけで美味しそうな気がしませんか?地域のイメージ、気候、歴史、伝統野菜などは独自性を見つけるヒントとなりそうです。難しく感じるかもしれませんが、地域性の無い農産物なんてまずありませんよね。掘り下げていけば独自性は必ず見つかりますし、地域に対する愛着や理解がより一層深まる嬉しいおまけ付きです。
人は自分に甘くなりがちです。ひょっとしたら不作や注文過多を理由に、少々出来の悪い野菜も一緒に売ってしまうかもしれません。自分だけは大丈夫と思わずに、ブランド維持のために客観的な品質基準を設けましょう。色、形、大きさ、栄養成分、施肥方法、品種、鮮度などの基準が色々考えられますね。
更にそれを消費者が見て分かるような形で表示しましょう。品質保証マークや生産者名、顔写真などはスーパーでもよく目にするようになりました。この表示による安心感を実感している人も多いのではないでしょうか。またせっかくブランド化するなら独自のブランド名やロゴを作ることもおススメです。その場合には他人に利用されないように商標登録を行いましょう。商標登録については役場の農業担当者に相談してみましょう。
ポイント1, 2を抑えることで、他には真似できないあなただけの立派なブランド野菜が出来上がっていることでしょう。あとは販売するだけですが”誰にどのように販売するのか”しっかり販売戦略を立てることが重要になります。
例えば有機栽培にこだわった野菜を、JAなどを通して慣行野菜と区別無く売りたいという人はまずいないと思います。有機栽培という点に付加価値を認めてお金を出してくれる人に売りたいと思ったら、健康志向の人が多く訪れる自然食品店などに卸すことが考えられます。一口に自然食品店といっても素朴な店、オシャレな店、マニアックな店と色々です。自分のブランドイメージに合うお店を探しましょう。
また客層として独身の人や高齢者が多いなら使い切りやすい量で売る、若い女性が多いなら彩りや流行に気を配るなど、顧客ニーズに合わせて売り方を工夫することも大切です。
ここからは卸さずに自分で売ることを考えてみましょう。実店舗でも良いですし、それが難しいならネットショップを開業するというのもありです。自分でお店を構えるとデザイン等を自由にアレンジできてブランドイメージが打ち出しやすくなります。
一から店舗を作るのは知識も無いし想像するだけで挫けそうという場合には試しにフリマアプリ「メルカリ」などに出品してみるというのも1つの方法です。「メルカリ」は中古品販売のイメージが強いかもしれませんが、野菜も販売されています。出品方法が簡単なうえ支払いトラブル防止システムも整っており、販売が素人という人でも簡単に利用できるようになっています。
他に店舗を伴わない方法としては、野菜の自動販売機なんてものもあります。手持ちの無人販売所をカスタムチェンジするもよし、ここだと見込んだ場所に設置をお願いするもよし、使い方はあなた次第です。
今回ご紹介したいずれの場合でも、野菜をお菓子や漬物などに加工して売りたい場合には、食品衛生法や条例で許可が必要になることが多いので気を付けて下さいね。
インターネットが普及し様々な販売方法が利用できる便利な今の時代、個人による野菜のブランド化は難しいものではなくなってきました。あなたが生み出した個性光る自慢の野菜たちを、売りたいターゲットを目がけて思いきり売り込みましょう。
【参考文献】
・農林水産物・地域食品における地域ブランド化の先進的取組事例集、農林水産省 大臣官房企画評価課 知的財産戦略チーム、2007.
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/b_kankei/pdf/data3_1.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。