アグリキュレーター
公開日:2019.06.28
埼玉県の本庄市にてきゅうり栽培一筋の内野さん。露地では米と麦も栽培しています。
就農してより16年。細かな管理で昼夜問わず常にハウス環境をチェックし、大切にきゅうりを育てています。現在は統合環境制御盤とクラウドサービスを活用してスマートフォンを使った遠隔管理を行う等、最新技術を積極的に取り入れています。そんな内野さんの取組みに興味をもつ農家さんも少なくなく、栽培の取組みについての情報交換に訪れます。その取り組みについてインタビューしました。
環境制御をはじめたきっかっけはなんですか?
今まで簡易的な機器を使って環境を測定していました。しかし、日射の影響を受けて正確に測定することができず、また測定間隔が5分間で、リアルタイムの数値を見ることができませんでした。しっかりモニタリングがしたいと思い、各社見て回ったのですが、測定間隔や測定値の正確さなど、私の求める条件に合う測定器はありませんでした。
そのような時、たまたまインターネットで検索していて、ニッポーの統合環境制御盤「ハウスナビ・アドバンス」を見つけました。ハウスナビは1分間隔でデータを見ることができ、センサーが入っている木製のBOXは直射日光の影響を受けにくく、ファンもついているので正確に測定できる点に惹かれ担当者に問い合わせをしました。最初は環境測定だけで良いと思っていたのですが、環境制御盤とセンサーのセットが意外とリーズナブルだったので、制御もしてみようと思い導入を決めました。
統合環境制御盤を導入したメリットはなんですか?
今までの制御は“暖房は暖房機の制御盤でコントロール”といったバラバラの操作をしていました。
操作の際には30分に1回数値の変化を見ては天窓の開度を変えるなど、測定器の数値を元にそれぞれ手動で動かしていました。急に天気が変わって寒くなったりすると、開けすぎた天窓を閉めに戻ったり、常時気にしてハウスを行ったり来たりすることもあります。私のハウスは2ヶ所あって往復30分かかるため、移動だけでも労力を費やしていました。
導入した「ハウスナビ・アドバンス」では2点をセットするとその間を自動で傾斜温度管理するので、その間は見ていなくても任せられます。おかげでハウスから離れられる時間が増え、他の作業に時間を使うことができます。午前中は6~8回ハウスを往復していましたが、今では1~2回に減りました。
統合環境制御ではそれぞれの要素を測定し、設定した環境にるように自動で動いてくれるので、“自分が思い描くハウスの環境に近づけることが出来る”。これが1番のメリットだと思っています。
省力化というのは、手間はなくなっているけど利益になっているかはわかりません。でも自分の管理に近づけられるということは正しく制御できているということなので、生育に反映されるからメリットが大きいと思います。
クラウドサービスを使って日々どのようにデータ管理をしていますか?
今まではパソコンをハウスに置いて、インターネットを接続してデータを見ていました。でも、パソコンの調子が悪いと接続が切れて見られなくなる。クラウドサービスにしてそのような煩わしさがなくなりました。いつでもハウス内が見られるという安心感もあります。
だいたい30分に1回はデータを確認しています。やっぱり気になる時間って毎日決まっていて、データを見るのが習慣になっています。機器がちゃんと動いているか動作確認の意味もありますが、その日によって開度とか風の強さとかによって変えるので、自分がどこにセットしたのか忘れてしまうのです。
例えば、天窓の開度を30%にしておいたときに日が照ってくると、ハウス内の温度が上がり過ぎてしまいます。もちろん上限超えれば天窓は全開になるのですが、それだと急激な温度変化をさせてしまうので、そうさせないために細めに設定を変える必要があります。自分のミス防止のためにも、常にデータを見ているのです。
就農した当初は機器が稼働しているか心配で夜中にハウスへ行くこともありました。今では自動で暖房機もつくし、それをスマートフォンで確認できるので、夜中にハウスへ行くこともなくなりましたね。遠隔管理は非常に便利です。もうスマートフォンが手放せないですね。だから家では子供に携帯ばっかり見ているって言われます(笑)これも仕事だと言っているんですけどね。
-1日のデータを振り返ることはありますか?
常にスマートフォンでデータを確認しているため、自宅に帰ってから1日のデータを振り返ることはほとんどありません。そのポイント、ポイントの設定値をクリアしていれば基本的には振り返る必要はないと思っています。あとで振り返るとすれば、平均気温とDIFの数値が出るので、それを見て1日の温度設定と実際の温度の差を見て、次の日の参考にします。
今後の展望を教えてください。
ハウスの環境作りにおける労力削減はほぼ達成されているといっても過言ではない機械です。機械だからこそ、設定した通りに同じことが繰り返せる良さがあります。技術の継承、記憶ができるのです。これからも、もっと細かいところをつめていきたいと思っています。
メーカーさんには色々と要望をだしているので、それを改善してもらい、もっともっと使いやすい機械にバージョンアップしていってほしいです。
ハウスの情報
ハウス:連棟のビニールハウス
ハウス面積: 600坪、300坪、100坪(全3棟)
暖房機:2台、1台、1台
炭酸ガス発生器:各1台
統合環境制御盤:1台
天窓、カーテン:自動
潅水:手動
ハウスの様子
キュレータープロフィール
埼玉県/キュウリ生産者
内野さん
父親の病気を機に就農され、きゅうり一筋に栽培しているとても真面目な農家さん。自分の栽培の形を築くまでには寝る間も惜しんでハウスに通い、細かな栽培管理で大切にきゅうりを育ててきた。
また、地域で開催される勉強会や意見交換会等には積極的に参加し、環境制御についての知識を高めてきた。同地域では環境制御に取組む農家さんは少なく、最新技術を使った取り組みをしている数少ない若手農家だ。メーカーよりも詳しいのでは?と思うほど、機器を使いこなしている。そんな内野さんの元には年上の農家たちも情報交換に訪れている。
取材担当者より