コラム

種苗法をわかりやすく解説!農家が知っておくべきのポイントを解説

公開日:2024.01.09

昨今、フリマサイトなどで違法に増殖された種苗の取り引きが増加していることが問題になっています。そこで今回は、種苗の利用者・販売者それぞれが知っておきたい種苗法のポイントをわかりやすくまとめました。育成者権侵害の具体例や登録品種を扱う場合の注意点もご紹介します。

1.種苗法とは?対象となる品種をチェック

種苗法とは、野菜や果樹など農産物の品種開発を行う育成者を保護するための法律です。2021年4月には、登録品種の適性管理や海外流出を防ぐことを目的に法改正が行われています。これにより、品種開発者の意思に応じて自家増殖や海外流出を制限できるようになりました。

種苗法では、新品種として開発して農林水産省に品種登録されたものが対象となります。在来種やこれまでに登録されたことがない品種、登録期限が切れた品種については一般品種とされ、自由に利用できます。これまでは、登録品種であっても自家増殖したものを栽培に利用する分には問題ありませんでした。しかし、法改正後は育成者の許諾が必要となっています。また、許諾料がかかる場合もあります。基本的に登録品種の種苗には「登録品種」と表示されているため、一般品種と区別するのは簡単です。ただし、登録品種のなかには利用条件が設定されているものもあるので、表示をよく確認するようにしましょう。

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2.【利用者必見】農家が知っておきたい種苗法のポイント

ここからは、生産者が種苗を扱う上で知っておきたいポイントをご紹介します。

育成者権を侵害するとどうなる?

はじめに、育成者権を侵害した場合の罰則について見ていきましょう。
育成者権を故意に侵害すると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(またはその両方)が課せられる可能性があります。また、品種の開発者から損害賠償を求められる場合もあります。 無断増殖されたものと知らずに使用している場合については、処罰されることはありません。ただし、開発者から損害賠償を求められる可能性も考えられます。購入した苗が登録品種で無断増殖されたものか不明な場合は、販売者に確認をとるようにしましょう。 無断増殖された苗を使用した場合、損害賠償請求のリスクだけでなく、病害の拡大も懸念されるため注意が必要です。自身の圃場で病害を蔓延させないためにも、正規の種苗販売店で購入することをおすすめします。

種苗法の違反事例

育成者権の侵害にあたる具体的な例としては、以下のような行為が挙げられます。
・果樹や花きなどの選定枝を台木に接いで新たな苗木を得る行為
・果樹の樹勢を強くするため、選定枝を高い位置で接ぐ行為
・花きの一部を残して株分けする行為(苗の集合体を分ける行為は除く)
・イチゴ苗の契約範囲を超えて増殖する行為
・スーパーなどで購入した登録品種の農産物から種苗を得る行為
・食用ジャガイモを種イモとして利用する行為


2023年11月には、登録品種のイチゴを無断で増殖してフリマアプリで販売したとして、書類送検された事件が話題になりました。また、過去にはブドウのシャインマスカットやナガノパープルといった登録品種がフリマアプリで販売され、販売者には罰金刑が課されています。このような事態を防ぐためにも、登録品種の取り扱い方法をしっかりと理解しておきましょう。

3.【販売者必見】種苗の販売する際に必要な表示事項

ここからは販売者が知っておきたいポイントをご紹介します。

登録品種の種苗を販売するときには、育成者権者からの許諾を受けるだけでなく、登録品種であることを明記する必要があります。そのため、種苗の包装などに品種名と登録品種である旨を記載しましょう。また、海外持ち出し制限や栽培地域が指定されている場合は、その旨を表示しなくてはなりません。フリマアプリなどで販売する場合についても、上記の内容を商品の説明欄に必ず記載してください。さらに、登録品種以外の種苗であっても、販売を行う際は以下の項目を記載する必要があります。

・表示をした種苗業者の氏名(法人は名称)および住所
・種類および品種(接ぎ木苗の場合は穂木および台木の種類・品種)
・生産地
・種子の場合、採種した年月および発芽率
・数量
・農薬の使用履歴




表示を行わなかった場合、表示命令や販売禁止命令といった措置を受けることがあります。これらの命令を無視して販売を続けた場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があるので注意しましょう。


今回は、農家の方が知っておきたい種苗法のポイントをまとめました。出所が不明な種苗を利用することは、育成者権の侵害になるだけでなく、作物の病気や害虫などのリスクも考えられます。種苗を購入して利用する立場の方はもちろん、販売を行っている方も種苗法を理解し、適切に取り扱うようにしましょう。



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▼参考サイト
〇農林水産省,フリマサイト等における育成者権侵害品の取引防止に向けた取組強化について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/syubyouhou/attach/pdf/tane_matte-3.pdf
〇農林水産省,そのタネ、ほんとに大丈夫?~育成者権侵害について~
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/syubyouhou/tane_matte.html
〇農林水産省,<フリマサイト・通販サイトを利用される方へ>植物・昆虫類の販売・購入に気を付けてください!
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/furima/hurima_pq.html
〇農林水産省,指定種苗制度をご存知ですか?
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/tizai/syubyo/attach/pdf/index-19.pdf
〇農林水産省,検査及び罰則について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/tizai/syubyo/pdf/01.pdf

ライタープロフィール

かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。 家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。









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